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なぜメルカリと Instagram は別々なのか — Tsumu 設計の出発点

なぜメルカリと Instagram は別々なのか — Tsumu 設計の出発点

Tsumu の設計を始める前に、ひとつの問いを立てて徹底的に調べました。「なぜメルカリと Instagram は別々のアプリなのか。一つにまとまっていた方が便利ではないのか」——個人データの一元化を謳うプロダクトを作るなら、この問いから逃げてはいけないと考えたからです。

「バンドルか、アンバンドルか」

Netscape の CEO だった Jim Barksdale は「金を稼ぐ方法は2つしかない。バンドリング(束ねる)とアンバンドリング(ほどく)だ」と言いました。実際、ソフトウェアの歴史は束ねと解体の振り子です。そして調べていくと、「全部入り」が成立する条件はかなり狭いことが分かります。

  • WeChat のようなスーパーアプリが成立したのは、決済もECも未成熟な「空白の市場」だったから。既存の強い特化アプリを置き換える形のスーパーアプリは、欧米でも日本でも繰り返し失敗しています
  • 日本でも、スーパーアプリ化を掲げた LINE が、中核のはずの LINE Pay を終了して PayPay に一本化しました。決済という「他者のネットワークが命の機能」は、特化側に委ねる判断です

特化アプリの価値は「他者の厚み」

メルカリの価値は、出品のしやすさだけではなく、買い手の厚み・エスクロー・匿名配送にあります。Instagram の価値はフォロワーグラフと発見の仕組みにあります。つまりどちらも、価値の源泉が「本人のデータ」ではなく「他者の存在」にある。これは個人のポータルには移植できません。だから「メルカリも Instagram も置き換える集約アプリ」は、構造的に筋が悪いのです。

それでも残る、分かれたままのコスト

一方で、分かれたままであることのコストは、たしかに本人の側に残っています。出品履歴も、投稿も、評価も、各社のサーバーに分散していて、退会や規約変更、サービス終了で消えます。実際、家計の一元化サービスの代表だった Mint は 2024 年に閉鎖され、ユーザーの取引履歴やカスタム分類は引き継がれずに消えました。

Tsumu の守備範囲

この調査から、Tsumu の守備範囲をこう定めました。

  1. 行為はアプリのもの、記録は本人のもの。売る・投稿するという行為は特化アプリで行えばいい。Tsumu が預かるのはその「記録」だけ
  2. 他者向けの機能(取引・フィード)で特化アプリと競争しない
  3. 記録は横断でき、いつでも丸ごとエクスポートできる(ポータビリティ)

メルカリと Instagram が別々なのは偶然ではなく必然。だから Tsumu は、それらを置き換えるのではなく、分かれたままでいることのコストだけを引き受ける——これが設計の出発点です。

#リサーチ#設計思想#Tsumu