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(更新 )建築・リフォーム読了 約13分

概算見積とは何か——正式見積・参考見積との違いと、契約が成立する時点

概算見積とは、現地を見る前に少ない情報から出す「金額の目安」です。幅(◯万円〜◯万円)で出るのが普通で、正式な見積書でも契約金額でもありません。正式見積は、現地調査を経て工事内容を確定させたうえで出す書面で、契約直前に1つの金額として提示されます。「概算見積もり」「概算見積書」と書かれていても、指しているものは同じです。

概算も正式も契約ではない — 契約はいつ成立するのかを条文から解説
閉じたままの書類ばさみと印鑑

そしてどちらも受け取っただけでは契約ではありません。契約が成立するのは、申込みに対して相手が承諾したときだと民法に書かれています。

私たちはリフォーム会社向けの概算見積シミュレーターを開発している側なので、金額を出す仕組みの話と、法律上の位置づけの両方から整理します。

「概算」という言葉の意味と、対になる語

「概算」は、細かい部分を省いて大づかみに計算すること、またその金額です。文字どおり「概(おおむね)」の「算(計算)」で、精密さより速さを取った数字を指します。

対になる語は、文脈で変わります。

  • 一般的な会計・費用の話では「精算」 — 実際にかかった額を確定させる計算。概算で受け取った額を、あとで実費に合わせて清算する場面で対になります
  • 見積の話では「正式見積(詳細見積)」 — 現地調査と数量拾いを経て、1つの確定額として書面で出すもの

この記事で扱うのは後者、概算見積と正式見積の関係です。次章では、その中間で使われる参考見積もあわせて整理します。

概算見積・参考見積・正式見積は、どこが違うのか

違いは精度ではなく「何を前提に計算しているか」です。呼び名は「概算見積」「参考見積」「正式見積」の3つが使われますが、参考見積と概算見積は法令や業界の統一定義があるわけではなく、会社によってほぼ同義で使われることもあります。以下は、私たちが概算を出す仕組みを作る側として、前提の置き方で整理した表です。読むときは名前ではなく「前提の情報」の行を見てください。

概算見積参考見積正式見積
出すタイミング相談の初期・問い合わせ前打ち合わせの途中現地調査のあと・契約の直前
前提の情報建物種別・面積・希望グレードなど少数仕様を仮に1つ置く(仮定を明示する)実測値・下地の状態・搬入経路
金額の出方幅(◯万円〜◯万円)1つの金額(ただし仮定つき)1つの確定額
書面性画面表示・メモ書きのことも多い内訳のある書面のことが多い有効期限・除外条件を書いた書面
位置づけ話を始めるための目安仕様を決めるためのたたき台契約金額の候補

「参考見積」で気をつけたいのは、1つの金額で出るのに確定額ではないところです。概算のように幅では書かれていないので確定額に見えますが、根拠は「仕様をこう仮定した場合」であって、現地を見た結果ではないことが多いです。参考見積を受け取ったら、金額よりもどの仕様を前提にした金額かを先に確認してください。前提が書かれていない場合、その金額がどれだけ動きうるかは読み取れません。

概算は「この工事はだいたいいくらの世界か」を知るためのものです。正式見積は「この会社にこの内容で頼むといくらか」を確定させるためのものです。目的が違うので、金額がずれること自体は異常ではありません。

では、契約はいつ成立するのか

見積を受け取ってから契約が成立するまでの分かれ道
「お願いします」は書面を見てから言う

ここが多くの方の不安の中心だと思います。答えは書面ではなく、意思のやりとりにあります。

契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

(出典: 民法 第522条(新しいタブで開く)・e-Gov法令検索)

つまり原則として、契約の成立に書面は要りません。見積書を受け取った段階では、まだ会社側が金額を示しただけの状態です。しかし、その場で「ではこの内容でお願いします」と言い、相手が引き受ければ、紙がなくても契約が成立する余地があります。

一方で、建設工事の請負契約には建設業法(新しいタブで開く)第19条という特別なルールがあります。

建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

(出典: 建設業法 第19条(新しいタブで開く)・e-Gov法令検索)

同条は、工事内容・請負代金の額・工期・支払時期・紛争の解決方法など16項目を書面に記載して相互に交付するよう定めています。ただしこれは建設業者に課された義務であり、書面がなければ契約が成立しないという意味には一般に解されていません。

読者にとっての実用的な結論はひとつです。「お願いします」は、書面を見てから言う。見積書の内容に不明点が残っているうちは、「持ち帰って検討します」と言えば足ります。

「概算より高くなった」はどう扱われるのか

概算60万円が、正式見積で78万円になった。このとき「約束が違う」と言えるかというと、概算は契約金額ではないので、金額そのものを根拠に争うのは難しいのが実情です。

見るべきは差額ではなく、増えた行の中身です。概算に入っていなかった工事が出てきたのか、同じ工事の単価が上がったのかで、話がまったく変わります(見積書の行の読み方はリフォーム見積書の見方にまとめました)。

一方、契約したあとの増額は扱いが違います。建設業法第19条第2項は、契約内容のうち同条第1項の事項を変更するときも、変更の内容を書面に記載して相互に交付しなければならないと定めています。着工後に「追加で◯万円かかります」と口頭で言われた場合、書面での確認を求めるのは正当な要求です。

なぜ概算は1つの数字にならないのか

幅が狭い行と広い行の対比
幅は精度ではなく情報の少なさの表示

ここからは、概算を出す仕組みを作っている側の話です。

私たちが提供しているシミュレーターは、リフォーム会社ごとの価格表を読み込んで金額を計算します。標準サンプルとして用意している価格表は50行で、そのうち49行が「下限」と「上限」の2つの数字を持っています(残る1行は工事小計に10%で乗る現場管理費なので、それ自体は幅を持ちません)。たとえばキッチン交換の標準グレードは60万円〜85万円で、1行の中に25万円の幅があります。

幅は、49行の中央値で「下限の +60%」だった

この49行の幅を、下限に対する比率で測ってみました。

幅(上限÷下限−1)値
中央値+60%
下側25%点+42%
上側25%点+100%
最も狭い行+22%(クロス張替・標準/㎡単価)
最も広い行+200%(複数行が該当)

数字は自社サンプル価格表を集計したものです。リフォーム会社ごとの実際の価格表ではありません。

面白いのは、幅が狭い行と広い行がきれいに分かれることでした。

  • 狭い行は、単価×数量で決まる行。クロス張替(㎡単価)が +22〜29%、外壁塗装(坪単価)が +28〜29%。数量が図面や実測から出るので、単価の上下だけが幅になります
  • 広い行は、開けてみないと数量が決まらない補修の行。「解体後の土台腐食等の補修」5〜15万円、「石膏ボードの補修」1〜3万円、「床のきしみ・不陸の調整」2〜6万円は、いずれも下限の3倍が上限です

つまり幅の広さは計算の粗さではなく、「開けてみないと分からない行」がその工事にどれだけ含まれているかの表示です。浴室のように解体をともなう工事で幅が大きく見えるのは、精度が低いからではありません。

幅を一番広げているのは「グレード未定」で、決めるだけで 3.00倍 → 1.44倍 に縮みました

行の中の幅(+60%)より大きく効くものが、もう1つありました。どのグレードの商品を入れるかが決まっていないことです。

同じサンプル価格表で、標準・中級・高級の3段を持つ工事項目は9項目(キッチン交換・浴室・トイレ交換・洗面化粧台・給湯器交換・クロス張替・床・外壁塗装・屋根塗装)です。この9項目について、「グレードが決まっていない状態の幅」=標準の下限から高級の上限までと、「グレードを標準に決めた状態の幅」を比べました。

状態9項目の 上限÷下限 の中央値キッチン交換1項目で見ると
グレード未定(標準の下限〜高級の上限)3.00倍60万円〜180万円(3.00倍)
グレードを標準に固定1.44倍60万円〜85万円(1.42倍)

中央値の列は9項目をまとめた値で、右の列はそのうち1項目の実数です(キッチン交換の固定後は1.42倍で、9項目の中央値1.44倍とは一致しません)。9項目のうち、グレード未定の倍率が最も小さいのは外壁塗装(1.92倍)、最も大きいのは洗面化粧台(4.83倍・12万円〜58万円)でした。数字は自社サンプル価格表を集計したもので、リフォーム会社ごとの実際の価格表ではありません。

読者にとっての使い方はひとつです。概算の幅が広すぎて判断できないときは、現地調査を待つ前に「グレードを1つ仮に決めてもらう」と幅が縮む場合があります。先の比較表で挙げた参考見積が1つの金額で出せるのも、この仮定を先に置いているからです。前提の仕様が書かれていない1つの金額は、幅がどれだけ畳まれた結果なのかを読者の側から確かめられません。

設計の途中で、この幅を平均値に潰して1つの数字を出す案を検討し、採用しませんでした。理由は2つです。

  1. 幅を消すと、確定額に見えてしまう(実際には現地を見ていない)
  2. 実際より有利だと誤解させる表示になりかねない(景品表示法の有利誤認)

その代わり、画面には現地調査後に確定するものを明示的に並べています。下地・配管の状態による追加補修、搬入経路による作業費、駐車場代などの実費、商品の在庫と納期の4つです。

作ってみて分かったのは、概算の幅は精度の低さではなく、情報の少なさの表示だということでした。幅が狭い概算ほど良いわけではありません。幅がないのに現地を見ていない金額のほうが、あとで動きます。

訪問で受け取った概算には、8日間の窓がある場合があります

営業の方が自宅に来て、その場で概算を出し、その日のうちに契約を勧められた——という状況は特に注意が必要です。

訪問販売に当たる取引では、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、書面または電磁的記録によって申込みの撤回や契約の解除(クーリング・オフ)ができるとされています(出典: 訪問販売|特定商取引法ガイド(新しいタブで開く)・消費者庁)。特定商取引法(新しいタブで開く)第9条は、この通知を発した時点で効力が生じること、また撤回に伴う損害賠償や違約金を事業者が請求できないことも定めています。

ただし、適用されるかどうかは取引の形態によって変わります。判断に迷う場合は、公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センターの住まいるダイヤル(新しいタブで開く)などの公的な窓口に相談するのが確実です。

よくある質問

概算見積とは何ですか

現地調査の前に、建物種別・面積・希望グレードなど少ない情報から出す金額の目安です。幅(◯万円〜◯万円)で示されるのが普通で、正式な見積書でも契約金額でもありません。受け取っただけでは契約は成立しません。

概算見積・概算見積もり・概算見積書は違うものですか

通常は同じものを指します。送り仮名の有無(概算見積/概算見積もり)や「書」が付くかどうかは表記の差で、中身が変わるものではありません。ただし「概算見積書」と書面の形で渡された場合でも、それは確定額ではありません。判断の基準は名前ではなく、現地調査を経ているかどうかです。

参考見積と概算見積の違いは何ですか

多くの場合、概算見積は幅で出し、参考見積は仕様を1つ仮定して1つの金額で出します。ただし法令や業界の統一定義はなく、会社によってほぼ同義で使われることもあります。どちらも現地調査の前であれば確定額ではありません。参考見積のほうが確定額に見えてしまうため、受け取ったら「どの仕様を前提にした金額か」を確認してください。

見積書に「概算」と書かれていたら、どう読めばいいですか

その金額では契約しない、という前提で読んでください。「概算」の記載は、会社側が「現地調査前の数字である」と明示している状態です。確認すべきは3点で、①どこまでの工事が含まれているか ②含まれていない工事は何か ③いつ正式見積に切り替わるか、です。①②が書かれていない概算は、金額の比較に使えません。

概算の対義語は何ですか

費用の話では「精算」(実際にかかった額を確定させる計算)が対になります。見積の話では「正式見積(詳細見積)」、つまり現地調査と数量拾いを経て1つの確定額を書面で出すものが対になります。

見積書にサインしたら契約したことになりますか

書類の名前ではなく、内容と署名の意味で決まります。「注文書」「工事請書」「契約書」の性格を持つ書面に署名すれば、契約の意思表示と受け取られるのが通常です。見積書に「上記内容で発注します」といった一文がある場合は、実質的に注文書ですので、その場でサインを求められたら一度持ち帰ってください。

概算見積をもらっただけで断るのは失礼ですか

失礼にはあたりません。概算は、会社側が「話を始めるために」出しているものです。断ることまで織り込んで運用されています。依頼前に何を揃えておくと話が早いかは、リフォーム見積もりの取り方にまとめました。

正式見積に有効期限があるのはなぜですか

材料価格・人件費・職人の稼働が動くからです。期限を切らずに出すと、半年後に同じ金額で受けざるを得なくなります。期限が書かれていない見積書を受け取ったら、いつまでの金額かを確認してください。

概算と正式見積で金額が違うのは、よくあることですか

前提の情報量が違うので、ずれること自体は普通です。確認すべきは差額の大きさではなく、増えた項目が何かです。項目名を挙げて説明できる会社であれば、着工後の追加も少ない傾向があります。

相見積もりのとき、概算どうしを比べれば足りますか

足りません。概算は各社の仮定条件の上に載った数字なので、含まれる工事の範囲が揃っていないからです。比較は正式見積の行単位で行ってください。何社に頼むかは相見積もりの適正数を参考にしてください。

まとめ

  • 概算見積(概算見積もり)は現地調査の前に少ない情報から出す金額の目安で、幅で示されます。参考見積は仕様を1つ仮定して1つの金額で出すもの、正式見積は現地調査を経て1つの確定額を書面で出すもので、目的が違うため金額がずれること自体は異常ではありません(概算見積と参考見積に統一定義はなく、会社によって同義で使われることもあります)。
  • 契約は申込みに対して相手が承諾したときに成立し、原則として書面は要りません(民法第522条)。見積書を受け取った段階ではまだ契約ではないので、「お願いします」は書面を見てから言えば足ります。
  • 自社サンプル価格表49行では幅の中央値が下限の +60% で、狭い行は単価×数量で決まる行、広い行は開けてみないと数量が決まらない補修の行でした。幅の広さは精度の低さではなく、情報の少なさの表示です。
  • 幅を最も広げているのはグレード未定で、同じ自社サンプル価格表(実際の会社の価格表ではありません)で3段を持つ9項目を見ると、グレード未定の倍率は中央値 3.00倍、グレードを標準に決めると 1.44倍でした。幅が広すぎて判断できないときは、グレードを1つ仮に決めてもらうのが先です。

見積・相場まわりの記事は見積・相場の一覧にまとめています。工事ごとの金額の内訳はお風呂・浴室リフォーム費用相場の内訳が具体例です。

自社サイトに概算見積を置きたい会社様へ: 金額を幅で出しつつ「現地調査後に確定するもの」を同じ画面に並べる考え方は、メヤスの製品ページ(新しいタブで開く)にまとめています。

本記事は一般的な情報提供であり、個別の契約・工事金額についての法的判断を示すものではありません。条文はe-Gov法令検索(新しいタブで開く)、クーリング・オフの説明は消費者庁 特定商取引法ガイド(新しいタブで開く)にもとづきます。

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