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概算見積と正式見積の違い——どちらも「契約」ではない。では契約はいつ成立するのか

概算見積とは、現地を見る前に少ない情報から出す金額の目安です。正式見積は、現地調査を経て工事内容を確定させたうえで出す書面で、契約直前に提示されます。ここで大事なのは、どちらも受け取っただけでは契約ではないということです。契約が成立するのは、申込みに対して相手が承諾したときだと民法に書かれています。私たちはリフォーム会社向けの概算見積シミュレーターを開発している側なので、金額を出す仕組みの話と、法律上の位置づけの両方から整理します。

概算見積と正式見積は、どこが違うのか

違いは「精度」だけではありません。何を前提に計算しているかが違います。

概算見積正式見積
出すタイミング相談の初期・問い合わせ前現地調査のあと・契約の直前
前提の情報建物種別・面積・希望グレードなど少数実測値・下地の状態・搬入経路
金額の出方幅(◯万円〜◯万円)1つの確定額
書面性画面表示・メモ書きのことも多い有効期限・除外条件を書いた書面
位置づけ話を始めるための目安契約金額の候補

概算は「この工事はだいたいいくらの世界か」を知るためのものです。正式見積は「この会社にこの内容で頼むといくらか」を確定させるためのものです。目的が違うので、金額がずれること自体は異常ではありません。

では、契約はいつ成立するのか

ここが多くの方の不安の中心だと思います。答えは書面ではなく、意思のやりとりにあります。

契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。
契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない。

(出典: 民法 第522条・e-Gov法令検索)

つまり原則として、契約の成立に書面は要りません。見積書を受け取った段階では、まだ会社側が金額を示しただけの状態です。しかし、その場で「ではこの内容でお願いします」と言い、相手が引き受ければ、紙がなくても契約が成立する余地があります。

一方で、建設工事の請負契約には建設業法第19条という特別なルールがあります。

建設工事の請負契約の当事者は、前条の趣旨に従つて、契約の締結に際して次に掲げる事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければならない。

(出典: 建設業法 第19条・e-Gov法令検索)

同条は、工事内容・請負代金の額・工期・支払時期・紛争の解決方法など16項目を書面に記載して相互に交付するよう定めています。ただしこれは建設業者に課された義務であり、書面がなければ契約が成立しないという意味には一般に解されていません。

読者にとっての実用的な結論はひとつです。「お願いします」は、書面を見てから言う。見積書の内容に不明点が残っているうちは、「持ち帰って検討します」と言えば足ります。

「概算より高くなった」はどう扱われるのか

概算60万円が、正式見積で78万円になった。このとき「約束が違う」と言えるかというと、概算は契約金額ではないので、金額そのものを根拠に争うのは難しいのが実情です。

見るべきは差額ではなく、増えた行の中身です。概算に入っていなかった工事が出てきたのか、同じ工事の単価が上がったのかで、話がまったく変わります(見積書の行の読み方はリフォーム見積書の見方にまとめました)。

一方、契約したあとの増額は扱いが違います。建設業法第19条第2項は、契約内容のうち同条第1項の事項を変更するときも、変更の内容を書面に記載して相互に交付しなければならないと定めています。着工後に「追加で◯万円かかります」と口頭で言われた場合、書面での確認を求めるのは正当な要求です。

なぜ概算は1つの数字にならないのか

ここからは、概算を出す仕組みを作っている側の話です。

私たちが提供しているシミュレーターは、リフォーム会社ごとの価格表を読み込んで金額を計算します。標準サンプルとして用意している価格表は50行あり、その全行が「下限」と「上限」の2つの数字を持っています。たとえばキッチン交換の標準グレードは60万円〜85万円で、1行の中に25万円の幅があります。

設計の途中で、この幅を平均値に潰して1つの数字を出す案を検討し、採用しませんでした。理由は2つです。

  1. 幅を消すと、確定額に見えてしまう(実際には現地を見ていない)
  2. 実際より有利だと誤解させる表示になりかねない(景品表示法の有利誤認)

その代わり、画面には現地調査後に確定するものを明示的に並べています。下地・配管の状態による追加補修、搬入経路による作業費、駐車場代などの実費、商品の在庫と納期の4つです。

作ってみて分かったのは、概算の幅は精度の低さではなく、情報の少なさの表示だということでした。幅が狭い概算ほど良いわけではありません。幅がないのに現地を見ていない金額のほうが、あとで動きます。

訪問で受け取った概算には、8日間の窓がある場合があります

営業の方が自宅に来て、その場で概算を出し、その日のうちに契約を勧められた——という状況は特に注意が必要です。

訪問販売に当たる取引では、法律で決められた書面を受け取った日から数えて8日以内であれば、書面または電磁的記録によって申込みの撤回や契約の解除(クーリング・オフ)ができるとされています(出典: 訪問販売|特定商取引法ガイド・消費者庁)。特定商取引法第9条は、この通知を発した時点で効力が生じること、また撤回に伴う損害賠償や違約金を事業者が請求できないことも定めています。

ただし、適用されるかどうかは取引の形態によって変わります。判断に迷う場合は、公益財団法人 住宅リフォーム・紛争処理支援センターの住まいるダイヤルなどの公的な窓口に相談するのが確実です。

よくある質問

見積書にサインしたら契約したことになりますか

書類の名前ではなく、内容と署名の意味で決まります。「注文書」「工事請書」「契約書」の性格を持つ書面に署名すれば、契約の意思表示と受け取られるのが通常です。見積書に「上記内容で発注します」といった一文がある場合は、実質的に注文書ですので、その場でサインを求められたら一度持ち帰ってください。

概算見積をもらっただけで断るのは失礼ですか

失礼にはあたりません。概算は、会社側が「話を始めるために」出しているものです。断ることまで織り込んで運用されています。依頼前に何を揃えておくと話が早いかは、リフォーム見積もりの取り方にまとめました。

正式見積に有効期限があるのはなぜですか

材料価格・人件費・職人の稼働が動くからです。期限を切らずに出すと、半年後に同じ金額で受けざるを得なくなります。期限が書かれていない見積書を受け取ったら、いつまでの金額かを確認してください。

概算と正式見積で金額が違うのは、よくあることですか

前提の情報量が違うので、ずれること自体は普通です。確認すべきは差額の大きさではなく、増えた項目が何かです。項目名を挙げて説明できる会社であれば、着工後の追加も少ない傾向があります。

相見積もりのとき、概算どうしを比べれば足りますか

足りません。概算は各社の仮定条件の上に載った数字なので、含まれる工事の範囲が揃っていないからです。比較は正式見積の行単位で行ってください。何社に頼むかは相見積もりの適正数を参考にしてください。


自社サイトに概算見積を置きたい会社様へ: 金額を幅で出しつつ「現地調査後に確定するもの」を同じ画面に並べる考え方は、メヤスの製品ページにまとめています。

本記事は一般的な情報提供であり、個別の契約・工事金額についての法的判断を示すものではありません。条文はe-Gov法令検索、クーリング・オフの説明は消費者庁 特定商取引法ガイドにもとづきます。

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#メヤス#見積#AI法律