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個人開発のSaaSで準拠法・裁判管轄をどう定めたか——利用規約の一文が抜けていた話

個人開発のサービスであっても、利用規約に「準拠法」と「合意管轄裁判所」を明記していないと、万一の紛争時に、どの国の法律で、どこの裁判所を使って争うかが定まらず、対応コストが跳ね上がります。 特に海外のユーザーが利用できるサービスや、海外製の外部サービス(決済・ホスティング等)を組み合わせている場合、この一文の有無で実務上の負担が大きく変わります。この記事では、私たちが自社プロダクトの利用規約を整備する過程で、AIドラフトにこの条項が抜けていたことに気づいた経緯と、追加する際に実際に確認した判断基準を紹介します。

TL;DR

  • 準拠法・合意管轄の条項は法律上の必須記載事項ではないが、無いとトラブル時の対応コストが大きく増える
  • 海外ユーザーが使える・海外の外部サービスを組み込んでいるサービスほど、この条項の重要性が上がる
  • AIにひな形を作らせると、この条項自体が抜けている、または一般的すぎる文言で済まされていることがある
  • 判断の起点は「自分がどこにいて、相手方(ユーザー)がどこにいる可能性があるか」を洗い出すことに尽きる

準拠法・合意管轄とは何か、なぜ個人開発でも関係するか

準拠法とは、契約や利用関係に関するトラブルが起きた際に、どの国・地域の法律を適用して判断するかを定める取り決めです。合意管轄とは、実際に裁判を起こす場合に、どの裁判所を第一審の管轄として合意しておくかを定める取り決めです。どちらも利用規約に明記しなければ自動的に無効になるわけではありませんが、明記していない場合、国際裁判管轄や準拠法の決定は各国の法律・条約に委ねられ、開発者側にとって不利な地・不利な法律で争われる可能性が生じます。個人が一人で運営しているサービスであっても、ウェブ経由で世界中から利用され得る以上、この条項が「関係ない」とは言えません。

AIドラフトで実際に抜けていたこと

利用規約とプライバシーポリシーをAIと作った際の注意点でも触れましたが、準拠法・管轄裁判所の指定は、AIドラフトにおいて人間が必ず確認すべき項目として挙げていました。実際に私たちが確認したところ、AIが生成した初稿には、この条項自体は存在していたものの、「日本法を準拠法とし、東京地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする」という定型文が、サービスの実態確認なしにそのまま置かれている状態でした。文言自体は一般的で誤りではありませんが、この一文を入れる判断を、AIに任せきりにしてよいかどうかは別の問題です。

追加・確認する際に実際に迷ったこと

私たちが判断に迷ったのは、次の3点でした。

第一に、専属的合意管轄にするかどうかです。専属的と定めると、原則としてその裁判所以外では提訴できなくなります。個人開発者にとっては、自分の生活拠点に近い裁判所を指定しておく方が、万一の対応負担を抑えられます。

第二に、海外ユーザーへの適用可能性です。サービスが日本語のみで日本国内向けであっても、ウェブサービスである以上、海外からのアクセスや利用を技術的に排除しない限り、海外ユーザーとの間で紛争が生じる可能性はゼロではありません。ここは「起こりうるリスクの大きさ」と「規約の複雑化のバランス」で判断しました。

第三に、外部サービスの準拠法との整合性です。決済代行やホスティングに海外事業者を使っている場合、そのサービス自体の利用規約は別の準拠法(多くは米国の州法等)に従っています。自社サービスの準拠法と、依拠している外部サービスの準拠法は別物であり、混同しないことを確認しました。

個人開発者が確認すべきポイント

確認事項内容
準拠法の指定自国の法律を明記しているか、条文が実態確認なしのコピーになっていないか
管轄裁判所の指定専属的合意管轄にするか、非専属にするかを意図的に選んだか
対象ユーザーの地理的範囲海外ユーザーの利用を想定しているか、想定していないなら規約に明記しているか
外部サービスとの関係決済・ホスティング等、依拠する外部サービスの準拠法と混同していないか
消費者契約法との関係相手方が消費者である場合、専属的合意管轄の効力が制限される場合があることを把握しているか

まとめ——追加前のチェックリスト

  • [ ] 準拠法を明記し、実態確認なしのコピーになっていないか確認した
  • [ ] 専属的合意管轄にするかどうかを意図的に決めた
  • [ ] 海外ユーザーの利用可能性を洗い出した
  • [ ] 決済・ホスティング等、依拠する外部サービスの準拠法と混同していないことを確認した
  • [ ] 消費者との取引に該当する場合の制限を把握した

この記事は一般的な整理であり、個別のサービスにおける条項の有効性や適法性を保証するものではありません。実際にサービスを提供する際は、最新の法令と専門家の見解を確認してください。

よくある質問

Q. 準拠法・合意管轄の条項がなくても利用規約は有効ですか? A. 条項がないこと自体が規約全体を無効にするわけではありません。ただし、紛争発生時にどの法律・裁判所で争うかが定まらず、対応の予測可能性が下がります。

Q. 海外ユーザーを想定していない場合も必要ですか? A. 日本語のみ・日本国内向けを明記していても、ウェブ経由でのアクセスを技術的に排除していない限り、海外からの利用可能性は残ります。想定していないなら、その旨を利用規約に明記しておくことをおすすめします。

Q. 専属的合意管轄を指定すれば必ずその通りになりますか? A. 相手方が消費者に該当する取引の場合、消費者契約法等により専属的合意管轄の効力が制限される場合があります。対象になるかは取引の形態によって異なるため、個別の確認が必要です。

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#AI法律#個人開発#利用規約