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建築・リフォーム読了 約12

リフォームの単価表の作り方——「1行を何にするか」で表の寿命が決まる

リフォームの単価表を作るとき、最初に決めるのは単価ではなく「1行を何にするか」です。結論から言うと、本体工事は「工事項目 × グレード」を1行にし、商品名や型番は行のキーにしません。私たちが概算見積エンジン用に設計した標準価格表は、この形で本体27行・オプション21行・諸経費2行の合計50行に収まりました。この記事では、その50行を開いて、行のキー・列・単位・金額の幅の決め方を順に説明します。

単価表は切り方で決まる — 自社50行の実データと建設業法から解説

単価表の1行は「工事項目 × グレード」で切る

答えを先に書きます。本体工事の1行は、工事項目とグレードの組み合わせです。商品ではありません。

私たちの表では、工事項目は9つでした。キッチン交換、浴室(ユニットバス)、トイレ交換、洗面化粧台、給湯器交換、クロス(壁紙)張替、床(フローリング)、外壁塗装、屋根塗装です。これに標準・中級・高級の3グレードを掛けて、9 × 3 = 27行。これで本体工事は全部です。

カテゴリ工事項目グレード行数
水回りキッチン・浴室・トイレ・洗面・給湯器(5)標準/中級/高級15
内装クロス・床(2)標準/中級/高級6
外装外壁塗装・屋根塗装(2)標準/中級/高級6
合計9項目3段27

なぜ商品を1行にしないのか。商品を行のキーにすると、メーカーがカタログを更新するたびに表が丸ごと古くなるからです。品番は数年で入れ替わりますが、「キッチン交換の中級」という枠は入れ替わりません。

私たちの表では、商品名は「商品例」という別の列に置いています。しかも1つのセルに「クリナップ ラクエラ / TOTO ミッテ」のように2社を並べて入れています。これは手抜きではなく、商品はこの行の識別子ではなく、この行がどのあたりを指すかの例示だという設計上の宣言です。

列は10。ただし金額の列は2つしかない

行が決まったら、次は列です。私たちの表は10列でした。

#列名役割
1カテゴリ水回り/内装/外装/オプション/諸経費
2工事項目行のキー(前半)
3グレード行のキー(後半)
4商品例(メーカー・シリーズ)例示。計算には使わない
5型番例例示。計算には使わない
6商品説明施主に見せる説明文
7下限(万円)計算に使う
8上限(万円)計算に使う
9単位式/㎡/坪/畳/%
10画像URL表示用。計算には使わない

10列のうち、金額の計算に入るのは7・8の2列だけです。残りの8列は分類と説明に使われています。

ここが単価表と積算ソフトの一番大きな違いだと考えています。社内の積算だけが目的なら、必要なのは項目名と金額と単位でほぼ足ります。しかし単価表は、そのまま施主に見せる説明の原本にもなります。「中級とは何が違うのか」を毎回営業が口で説明している会社は、その説明を6列目に書いておくだけで説明が揃います。

10列目の「画像URL」は、いまのところ一度も計算に使われていません。それでも残しているのは、将来この表が画面に出るときに、行と画像がひもづいていないと後から貼り直す作業が発生するからです。列は増やすより、空のまま先に用意しておくほうが安く済みます。

単位は統一しない。実際は5種類が混ざる

単価表を作り始めて最初に手が止まるのが、単位です。結論は統一しないです。

私たちの50行を単位で数えると、こうなりました。

標準価格表50行の単位の内訳(自社サンプル・2026年8月時点)
37行
6行
3行
3行
%1行

50行のうち37行(74%)が「式」でした。式とは、数量を掛けずに一式いくらで持つ行のことです。

つまり、数量を掛ける行は12行(24%)しかありません。外壁塗装と屋根塗装は坪、クロスは㎡、床は畳。それだけです。

なお金額の桁も揃いません。クロス標準は1㎡あたり0.11万円、浴室の高級グレードは1式185万円で、同じ2つの列に約1,700倍の開きがある数字が同居しています。これを「単位が違うから表を分けよう」とすると、今度は工事1件の合計が出せなくなります。桁の違いは受け入れて、単位の列で読み分けるほうが単純です。

オプションは本体と同じ行に入れない

50行のうち21行は「オプション」でした。解体・処分、キッチンパネル張り、下地補修、コーキング打ち替え、棟板金の交換などです。

このオプション21行には、共通する特徴があります。グレードの列が全行「共通」で、標準・中級・高級の区別がありません。

行の種類行数グレード列読者(施主)に聞く質問
本体工事27標準/中級/高級どのグレードにしますか
オプション21共通(空振り)足しますか、足しませんか
諸経費2共通(聞かない。自動で乗る)

つまり1枚の表の中に、軸の違う2種類の行が同居しているわけです。本体はグレードで選ぶ行、オプションは足す・足さないで選ぶ行。判断の種類がまるで違います。

だからオプションを本体の金額に含めてはいけません。含めた瞬間、「解体費が入っているのか入っていないのか」が金額から読めなくなります。私たちの表ではオプションを工事項目ごとに2〜3行ずつぶら下げました。キッチンなら解体・処分/キッチンパネル張り/吊戸棚の交換の3行です。

見積の金額が人によって変わる会社では、たいていこのオプション層が抜けています。原因の切り分けは見積の属人化を解消する手順にまとめています。

率の行だけ、金額の幅を持てない

50行を眺めていて、1行だけ形が違うものがありました。現場管理費です。

この行は下限も上限も空欄で、単位が「%」、説明欄に「工事小計の10%」とだけ書かれています。50行のうち、金額の幅を持たない行はこの1行だけでした。

理由は計算の順番です。現場管理費は、他の行の合計が出てからでないと金額が決まりません。単価表の中に、最後に計算される従属の行が1行だけ混ざっているという状態です。

同じ諸経費でも、出張諸経費は1.5〜2.5万円という幅を持っています。こちらは他の行に依存しないからです。諸経費をひとまとめにせず、「率で乗る行」と「金額で乗る行」に分けて持つ——これが表を壊さないコツでした。

金額は点ではなく幅で持つ。そして法律が下限に触れている

私たちの表では、現場管理費を除く49行すべてが下限と上限の2つの金額を持っています。1つの数字に丸めていません。

丸めない理由は2つあります。1つは実務上の理由で、丸めた分の判断が担当者の頭の中に戻ってしまうからです。もう1つは表示の理由で、幅のあるものを1点で見せると、あとで上振れしたときに説明がつかなくなるからです。

そしてもう1つ、下限の置き方には法律が触れています。2025年12月12日施行の建設業法(新しいタブで開く)20条2項は、見積書に記載する材料費等の額について、こう定めています。

前項の場合において、材料費等記載見積書に記載する材料費等の額は、当該建設工事を施工するために通常必要と認められる材料費等の額を著しく下回るものであつてはならない。

つまり単価表の下限は、受注を取るために自由に下げてよい数字ではないという前提が置かれています。同じ20条の6項では、注文者の側にも「著しく下回る変更を求めてはならない」という線が引かれました。値引きの側から見た同じ話はリフォームの値引き交渉はいつが正解かで扱っています。

私たちの単価表に1行も無かったもの

ここからが、作るときにいちばん見落としやすい部分です。

先ほどの建設業法20条1項は、見積書に何を書くかを次のように定めています(2025年12月12日施行の現行条文)。

建設業者は、建設工事の請負契約を締結するに際しては、工事内容に応じ、工事の種別ごとの材料費、労務費及び当該建設工事に従事する労働者による適正な施工を確保するために不可欠な経費として国土交通省令で定めるもの(略)その他当該建設工事の施工のために必要な経費の内訳並びに工事の工程ごとの作業及びその準備に必要な日数を記載した建設工事の見積書(略)を作成するよう努めなければならない。

ここで言う「国土交通省令で定めるもの」の中身は、建設業法施行規則(新しいタブで開く)13条の12に3つ挙がっています。

  1. 法定福利費(建設工事に従事する者の健康保険料等の事業主負担額)
  2. 安全衛生経費(建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律10条に規定する経費)
  3. 建設業退職金共済契約に係る掛金

私たちの標準価格表50行に、この3つを表す行は1行もありません。諸経費のカテゴリにあるのは現場管理費と出張諸経費の2行だけです。さらに、10列のどこにも日数の列がありません。金額と説明しか持っていない表です。

概算と正式見積で法的な位置づけがどう違うのかは、概算見積と正式見積の違いで条文をたどって整理しています。

単価表を作る順番

ここまでの内容を、着手の順番にまとめます。

自社の単価表を作る7ステップ
  1. 工事項目を9〜15に絞る。受注の多い順に並べて上から切る(全工種を最初から並べない)
  2. グレードを3段に決める。標準・中級・高級で足りる。段数を増やすほど選べなくなる
  3. 過去の見積から同じ工事の高い例と安い例を1件ずつ出し、下限と上限を拾う
  4. オプションを別レイヤに書き出す。工事項目ごとに解体・処分/下地補修/同時施工の3方向で探すと2〜3行出る
  5. 単位を行ごとに決める。式・㎡・坪・畳が混ざってよい。現場が数量を拾う単位に合わせる
  6. 諸経費を「率で乗る行」と「金額で乗る行」に分ける。率は説明欄に何%かを必ず書く
  7. 改定日と版の列を足す。誰がいつ直したか分からない表は、半年で誰も信じなくなる

7番だけは、私たちの50行にもまだ無い列です。サンプルとして作った表なので改定履歴を持っていませんが、実運用に載せるなら最初から入れておくべき列だと考えています。

相場の数字は、自分で作らない

最後に注意点です。単価表の金額は、自社の原価と過去の受注実績から作るものです。ネットで拾った相場を写すと、自社では出せない金額が表に載ります。

社外の数字を参照したい場合は、継続的に価格調査を行っている団体の刊行物が一次ソースになります。一般財団法人経済調査会(新しいタブで開く)や一般財団法人建設物価調査会(新しいタブで開く)が、建設資材や工事の価格情報を継続して調査・刊行しています。消費者側のリフォーム費用の実態については、住宅リフォーム推進協議会(新しいタブで開く)が調査を公表しています。

また、作った単価表の金額を自社サイトや広告に出す段階になると、別のルールが関わります。実際より著しく有利だと誤認させる表示は景品表示法で禁じられており、条件や限定を小さく添えるだけの「打消し表示」も消費者庁のガイドライン(新しいタブで開く)で問題とされています。表に出すときは、幅を幅のまま見せるのが結局いちばん安全でした。

よくある質問

Q. リフォームの単価表は何行くらいが適正ですか?

行数に決まった正解はありませんが、私たちが概算用に設計したサンプルは50行(本体27・オプション21・諸経費2)でした。工事項目を9つに絞ったうえでの数字です。最初から全工種を並べるより、受注の多い項目から9〜15項目で始めて、使いながら足すほうが定着します。

Q. 単価は1つの金額で持つべきですか、幅で持つべきですか?

幅をおすすめします。私たちの表は現場管理費を除く49行すべてが下限と上限を持っています。1点に丸めると、その丸めた分の判断がふたたび担当者の頭の中に戻り、属人化が元に戻ります。なお建設業法20条2項は、見積書の材料費等について通常必要と認められる額を著しく下回ってはならないと定めており、下限は自由に下げてよい数字ではありません。

Q. 単位は㎡に統一したほうがきれいではないですか?

きれいですが、実務では機能しにくいです。私たちの50行では式37・坪6・㎡3・畳3・%1の5種類が混在し、数量を掛ける行は12行(24%)しかありませんでした。単位は会社の都合ではなく、現場が数量を拾う単位に合わせるほうが入力の間違いが減ります。

Q. 単価表と積算ソフトは何が違いますか?

単価表は「何をいくらで持つか」を決めたデータで、積算ソフトはそれを使って計算する道具です。データが決まっていないままソフトを入れても、入力する数字が人によって変わる状態は解消しません。ソフトの種類ごとの役割の違いはリフォーム見積もりソフトの比較にまとめています。

Q. 単価表があれば、そのまま正式な見積書として使えますか?

使えません。建設業法20条1項は、見積書に工事の種別ごとの材料費・労務費・省令で定める経費などの内訳に加えて、工事の工程ごとの作業と準備に必要な日数を記載するよう努めることを求めています。私たちの価格表には法定福利費・安全衛生経費・建設業退職金共済の掛金を表す行も、日数の列もありません。概算の金額に当たりを付ける表と、契約前に交付する見積書は別のものとして設計してください。

まとめ

単価表づくりでつまずく原因は、単価が分からないことではなく、1行を何にするかを決めないまま金額を集め始めることです。

本体は工事項目 × グレードで切る。オプションは別レイヤに置く。単位は統一しない。金額は幅で持つ。率の行は最後に計算する行として分けておく。この5つを先に決めれば、あとは行を埋めるだけの作業になります。

なお、この記事で挙げた金額はすべて自社サンプルの概算の幅であり、正式な見積や契約金額ではありません。実際の金額は現地の状態と仕様によって変わります。見積・相場まわりの記事は見積・相場の一覧にまとめています。

自社サイトに概算見積の入口を置きたいリフォーム会社様は、メヤス(新しいタブで開く)で、この価格表がそのまま画面になった状態をご覧いただけます。

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