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判例マンガ

雑誌は、発売前に止められるのか — 北方ジャーナル事件

憲法/最高裁判所大法廷 昭和61年(1986年)6月11日判決

雑誌の印刷・頒布を裁判所が仮処分で事前に差し止めることは、憲法21条2項の「検閲」にあたるか

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    1979年(昭和54年)2月、札幌。月刊誌「北方ジャーナル」の4月号が、発売を待っていた。

    レイこの雑誌は、北海道知事選挙をにらんだ政治記事を載せる予定でした。

    みょうぶ知事選の記事……。ふつうの特集記事じゃなさそう。

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    記事の標的は、元市長。次の知事選に立候補する予定の人物だった。

    レイ記事の題は『ある権力主義者の誘惑』。判決は、本文が人格を攻撃する言葉を多く含んでいたと認定しています。

    レイたとえば『天性の嘘つき』。このような表現が並んでいたんです。

    みょうぶそれは、黙って見ていられないよね。

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    元市長側は、発売前に記事を止めようとした。

    元市長(仮名)記事を世に出されては困る。印刷も、販売も、頒布も止めてもらおう。

    レイ1979年2月16日、札幌地方裁判所に仮処分が申請されました。その日のうちに、申請を認める決定が出ています。

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    雑誌社は、校了を済ませ、発売の準備を進めていた。予定発行部数は第一刷2万5000部。

    雑誌社の代表(仮名)2月8日に校了した。23日ごろの発売に向けて、印刷もほぼ終わっている。

    レイその雑誌が、ある日突然、一冊も出せなくなる。しかも知事選の二か月足らず前です。

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    出る前に止める。それは、憲法が『絶対に禁止』する検閲なのか。

    みょうぶ憲法21条2項には『検閲は、これをしてはならない』とあるよね。役所がだめと言うのと、裁判所が止めるのと、どう違うの?

    レイそこが争点です。一方で、名誉を傷つけられた人には、加害者に差止めを求める権利もある。表現の自由と名誉の保護が、正面からぶつかるんです。

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    最高裁は、まず『検閲』の意味を確かめた。

    レイ検閲とは、行政権が主体となって、表現物を網羅的・一般的に事前に審査し、不適当と認めるものの発表を禁じることです。

    レイ一方、裁判所の仮処分は、個別の私人どうしの紛争について、当事者の申請にもとづき、司法の手続で判断するもの。

    レイだから、この仮処分は『検閲』には当たらない、と判断しました。

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    ただし、裁判所の事前差止めも『事前の抑え込み』であることに変わりはない。

    レイ事前抑制は、読者に届く前に表現を押さえ込むもの。だから、厳格で明確な要件のもとでしか許されません。

    レイとくに、公務員や選挙の候補者への評価・批判は、公共の利害に関わる。その事前差止めは、原則として許されない。

    みょうぶ原則は、だめ!

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    例外は、二つの要件がそろうときだけ。

    レイ一つ目。表現の内容が真実でないこと、または、もっぱら公益を図る目的でないことが『明白』であること。

    レイ二つ目。被害者が『重大にして著しく回復困難な損害』を被るおそれがあること。

    レイこの二つが具備されて初めて、事前差止めが例外的に許される、というわけです。

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    手続にも、慎重さが求められる。

    レイ原則は、口頭弁論か、債務者の審尋を開いて、表現する側にも反論の機会を与えること。

    みょうぶ言い分を聞いてから止めるのが原則なんだ。

    レイただし、提出された資料だけで真実性の欠如が明白なら、審尋を経ずに差し止めても憲法違反にはならない、と示しています。

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    この事件の記事は、知事選の候補者への評価。原則は差止め不可だった。それでも認められたのは、なぜか。

    レイ判決は、記事の表現内容と疎明資料から、真実性を欠くことが仮処分の時点で明らかだったと認めました。

    レイまた、もっぱら公益を図る目的で書かれたものとはいえない。

    レイ2万5000部の雑誌が出回れば、知事選の直前に、事後には取り返せない損失が生じる。二つの要件は、そろっていたんです。

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    最高裁は、雑誌社の上告を棄却した。

    裁判長本件上告を棄却する。

    雑誌社の代表(仮名)いったん止められた記事は、戻ってこない……。

    レイ事前差止めは、この条件のもとでなら憲法に反しない、とされたわけです。

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    この判決が残したのは、『事前の差止めは例外中の例外』という物差し。

    レイ憲法21条2項の検閲は絶対に禁止。裁判所の仮処分は、そこには当たらないと判断された。でも、表現の自由への影響は大きいから、厳しい要件が課されるんです。

    みょうぶ名誉も大事だけど、表現だって守らなきゃいけないんだね。

    レイ名誉権は、物権と同じく排他性をもつ人格権。被害を受けた人は、民法710条の損害賠償や、723条の名誉回復の処分を求める道もあります。

この判例のポイント

この判決でおさえるべきなのは、『事前の差止め』を、原則として慎重に扱う枠組みです。仮処分による出版物の差止めは、憲法21条2項の『検閲』にはあたらないとされました。けれど、表現が世に出る前に止めるという点で、事前抑制であることに変わりはない。だから、厳格な要件が立てられています。

判断の材料は三つに整理できます。①検閲にあたるか(行政権が主体か、網羅的・一般的な審査か)、②公務員や候補者への評価は、原則として事前差止めが許されないこと、③例外として、真実性・公益目的の欠如が明白で、かつ重大・回復困難な損害の虞があること。この三つを並べて、どの要件がそろっているかを見ていく。

答案では、まず仮処分による事前差止めが憲法21条2項の『検閲』にあたるかを、『行政権が主体となって』という定義に当てはめて検討し、当たらないと結論づけます。そのうえで、事前抑制であることから表現の自由の観点で厳格な要件を立て、公職の候補者への評価は原則として差止めが許されないことを示します。例外の二要件は、判決の『明白』『重大にして著しく回復困難』をそのまま使い、本件では記事の内容・資料・発行部数・選挙の時期を挙げて当てはめると、論述が具体的になります。

人物は仮名にしています。事実関係と数値は判決文の認定にもとづいています。