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判例マンガ

観客席の私服警官 — 東大ポポロ事件

憲法/最高裁判所大法廷 昭和38年(1963年)5月22日判決

大学公認の学生劇団の公演に私服警察官が立ち入ったことが、憲法23条の学問の自由・大学の自治を侵害するかが争われた事件

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    1952年(昭和27年)2月20日。東京大学・本郷キャンパス。

    レイ今日の舞台は、法廷の前にまず大学の教室です。

    みょうぶ大学? 判例なのにキャンパスが舞台なの?

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    大学公認の学生劇団「ポポロ劇団」が、教室で演劇を上演していた。演目は松川事件を題材にした「何時の日にか」。大学の許可も得ていた。

    レイ切符を買えば、学外の人でも観られる公演でした。

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    客席に紛れていたのは、観客だけではなかった。

    周平(仮名)……待てよ。あの人、見たことのない顔だ。

    レイ学生が気づいたのは、本富士警察署の私服警察官でした。四名が、客席にまぎれ込んでいたのです。

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    学生たちは、三名の警察官を取り押さえた。

    周平(仮名)大学の中で、何を嗅ぎまわっていたんだ! 手帳を出せ!

    レイ学生は警察手帳を取り上げ、謝罪文を書かせ、暴行も加えました。

    みょうぶやりすぎな気もするけど……警察が大学に忍び込んでたのが、そもそもおかしくない?

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    のちに大学が手帳を調べると、警察は二年近く前から学内を見張り、学生の思想傾向まで記録していた。

    レイ大学側は、この手帳を警察に返すことを決議しています。

    みょうぶキャンパスの中まで、見張られてたんだ……

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    学生二名は、暴力行為等処罰ニ関スル法律違反で起訴された。

    レイ第一審・東京地裁は、無罪としました。

    周平(仮名)大学の自治を守るための、正当な行為だ。

    レイ判決は、学生の行為を大学の自治を守る正当行為と評価したのです。控訴審・東京高裁も、この判断を維持しました。

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    ここで問われているのは、「学問の自由」と「大学の自治」とは何か、という土台そのものだった。

    レイ憲法23条は『学問の自由は、これを保障する』と定めるだけです。でもこれは、研究の自由・発表の自由、そして大学の自治まで含む、と考えられてきました。

    みょうぶ大学の自治って、警察も学内に入れない、ってこと?

    レイそこが一番の争点です。どこまでが『学問』で、どこからが外れるのか。

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    検察官は上告した。最高裁大法廷が、判断を下す。

    みょうぶ二回連続で無罪。これも、もう決まりじゃないの?

    レイところが最高裁は、ここでも流れを変えるんです。

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    最高裁判所大法廷 昭和38年5月22日判決。

    裁判官原判決及び第一審判決を破棄する。本件を東京地方裁判所に差し戻す。

    周平(仮名)……差し戻し? まさか、負けなのか。

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    最高裁はまず、大学の自治とは何のための自治か、を確認した。

    レイ学問の自由は、研究と発表の自由を保障するものです。大学の自治は、この学問の自由を守るために、伝統的に認められてきました。

    みょうぶじゃあ、学問のためじゃない集まりは……

    レイそこなんです。最高裁は、学生の集会が真に学問的な研究やその結果の発表のためのものでなく、実社会の政治的・社会的活動にあたる場合には、大学の特別な自治の保護は及ばない、としました。

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    では、この演劇発表会はどちらだったのか。

    レイ最高裁が見たのは、演目が松川事件を題材にした政治色のある内容で、資金カンパや事件の報告も行われ、しかも入場券を買えば学外の人も入れる公開の集まりだった、という点です。

    みょうぶそれって、普通の『学問の発表会』とはちょっと違う……

    レイだから最高裁は、これは学問のための集会ではなく実社会の政治的・社会的活動であり、公開の集会に準じるものだと判断しました。大学の自治の保護対象には入らない、と。

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    保護の対象に入らない以上、警察官の立ち入りも、学問の自由や大学の自治を侵すものではなかった。

    レイだから、それを実力で排除しようとした学生の行為も、正当行為とはいえない——これが差し戻しの理由です。

    みょうぶ大学だから何でも許される、わけじゃないんだ。

    レイ憲法23条——『学問の自由は、これを保障する』。この短い条文の中身を、どこまでが学問で、どこからが社会活動かという線引きで初めて示したのが、この事件なんです。

この判例のポイント

この事件のポイントは、大学の自治が「学問の自由を守るための自治」であって、無制限の治外法権ではないということです。大学の中で行われていれば何でも保護される、という理解は誤りで、最高裁は保護の範囲を『真に学問的な研究又はその結果の発表のため』という目的に絞りました。

あてはめの決め手は三つです。①演目が政治的事件(松川事件)を題材にした内容だったこと、②資金カンパや事件報告など学問外の要素が含まれていたこと、③入場券を買えば学外者も入れる公開の集まりだったこと。この三つから『実社会の政治的社会的活動』であり『公開の集会に準じる』と評価されました。

答案での書き方: まず憲法23条が保障する学問の自由の内容(研究の自由・発表の自由)を確認し、大学の自治がその派生として認められることを示します。そのうえで、問題となる集会が『真に学問的研究又はその発表のため』のものかを、目的・内容・公開性から当てはめる、という二段構えで書きます。いきなり『大学の中だから自治で保護される』と書くと、保護の範囲を限定した最高裁の論理が消えてしまいます。

会話は読みやすさのための脚色です。登場する学生の名は仮名で、事実関係は一次資料にもとづいています。なお本件は裁判所の判例検索システムがJS描画のため全文PDFへ直接たどり着けず、判決原文を直接引用する法学系の講座サイトと、事実関係を詳述する百科事典的な解説の複数を突き合わせて確認しました。

出典