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判例マンガ

抜き打ち解散は、裁判所が裁けるのか — 苫米地事件

憲法/最高裁判所大法廷 昭和35年(1960年)6月8日判決

衆議院解散の効力を裁判所が審査できるか(統治行為論)

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    昭和27年(1952年)。国会議事堂の前に、報道陣が集まっている。

    レイ今日は、衆議院が解散されたあとに始まった、ひとつの裁判のおはなしです。

    みょうぶ解散って、議員さんが全員クビになるあれ?

    レイ正確には、任期の途中で議員の身分を失うこと。ここでは、その身分を取り戻せるかが問題になりました。

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    1952年8月28日。内閣が、衆議院の解散を決めた。

    レイ8月28日、吉田内閣は、憲法7条にもとづいて衆議院を解散しました。

    みょうぶ7条って、天皇の国事行為のところ?

    レイそうです。解散は、内閣の助言と承認にもとづいて天皇が行う国事行為とされています(憲法7条3号)。

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    解散で議席を失った衆議院議員の男(仮名:船坂)。

    船坂(仮名)解散は無効だ。任期はまだ残っておる。議員であることの確認と、任期満了までの歳費を支払ってもらおう。

    レイ訴えの中身は、この二つです。議員の資格の確認と、歳費(議員の報酬)の請求。

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    争点は、二つに分かれる。

    レイひとつ目は、解散が憲法に違反して無効かどうか。

    レイふたつ目は、そもそも裁判所がその判断をしてよいのかどうか。

    みょうぶふたつ目のほうが、むずかしそう……

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    東京地方裁判所。1953年10月19日の第一審。

    レイ第一審は、船坂さんの主張を認めました。解散は無効だという判断です。

    みょうぶじゃあ、勝ったんだ!

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    東京高等裁判所。1954年9月22日の控訴審。

    レイ控訴審は、第一審の判決を取り消しました。船坂さんは敗れます。

    船坂(仮名)なぜだ! 憲法に反する解散を、裁判所が見過ごすのか!

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    最高裁判所の大法廷。1960年6月8日。

    レイ事件は最高裁の大法廷へ。ここで、裁判所の考え方がはっきり示されました。

    みょうぶ大法廷って、特に重大な事件のときに開くところだよね。

  8. 8 / 13

    判決文の一節が、大きく映し出される。

    レイ判決はこう述べます。「直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為のごときは、たとえそれが法律上の争訟となり、これに対する有効無効の判断が法律上可能である場合であつても、かかる国家行為は裁判所の審査権の外にあり」。

    みょうぶ法律の争いになっても、裁判所は見ないってこと?

  9. 9 / 13

    歳費を請求する訴訟の中で解散の有効性が争われても、扱いは同じ。

    レイ船坂さんは、歳費の請求の前提として解散の無効を主張しました。

    レイ判決は、その主張が訴訟の前提問題として出されても、解散の有効性は裁判所の審査の外にあると判断しています。

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    判断を委ねられたのは、政治の場と、国民だった。

    レイ判決は、その判断を「政府、国会等の政治部門」に委ね、最終的には「国民の政治判断に委ねられている」としました。

    みょうぶ裁判所が、政治の判断を一歩引いて見守るような感じ?

  11. 11 / 13

    上告は棄却された。

    裁判長上告を、棄却する。

    船坂(仮名)……議員の席も、歳費も、戻らぬのか。

  12. 12 / 13

    憲法81条の条文が、書庫の棚に浮かぶ。

    みょうぶでも憲法って、裁判所が違憲かどうかを決める権限を持っているんじゃないの?

    レイそう。憲法81条は、最高裁判所に違憲審査権を与えています。原則として、どんな法律や処分も審査の対象になる。

    レイ苫米地事件が示したのは、その原則にも例外があるかもしれない、ということなんです。これが「統治行為論」と呼ばれる考え方です。

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    抜き打ちの解散と、裁かれなかった判断。

    レイこの判決が残した問いは、今も続いています。どこまでが裁判所の仕事で、どこからが政治の仕事なのか。

    みょうぶ裁判所が手を出さない領域がある、ってこと。覚えておこう。

この判例のポイント

苫米地事件でおさえるべきなのは、「解散は違憲か」という結論よりも、「その問いに裁判所が答えてよいか」という入口の問題です。判決は、高度に政治性のある国家行為については、法律上の争訟の形をとっていても裁判所の審査権の外にある、と述べました。

判断の材料は3つに整理できます。①対象が「直接国家統治の基本に関する」行為であること、②その性質上、政治部門(政府・国会)と最終的には国民の政治判断に委ねられるべきであること、③歳費請求という形をとって、解散の効力が前提問題として争われても扱いは変わらないこと。この3つがそろうとき、判断は審査の外に置かれます。

答案では、まず憲法81条が裁判所に違憲審査権を与えていることを確認し、そのうえで統治行為論の当否を検討する順序で書きます。いきなり「統治行為だから審査しない」と書くと、審査権の原則と例外の関係が消えてしまいます。結論の当否は、対象行為の政治性と、司法判断が果たす役割を比べて論じると書きやすくなります。

会話は読みやすさのための脚色です。人物名はすべて仮名で、事実関係と判旨の引用は判決および判例解説にもとづいています。