判例マンガ
7,663円の神事 — 津地鎮祭事件
憲法/最高裁判所大法廷 昭和52年(1977年)7月13日判決(昭和46年(行ツ)第69号)
市が主催し公金を支出した地鎮祭が、憲法の定める政教分離の原則(20条1項後段・3項、89条)に反するかが問われた事件
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三重県津市。市が、新しい市立体育館を建てることになった。
レイ建物の工事を始める前に、土地の神さまに安全を願う儀式をするんです。地鎮祭、と言います。
みょうぶああ、よく見るやつだ。神主さんが御祓いするの。
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昭和40年(1965年)1月14日。津市体育館の起工式が、神式でとりおこなわれた。
レイ主催したのは津市。市長の名前で挙行されました。式を執り行ったのは、市内でもっとも格式が高いとされる神社、大市神社の宮司です。
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式の費用は、すべて市の予算——公金から支払われた。
レイ供物料3,663円、神職への初穂料4,000円。合計7,663円です。
みょうぶ意外と安い……というか、それが問題になるの?
レイ金額の大小は、今日の本題じゃないんです。
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招待状は、市長名で市議会議員にも郵送されていた。
辰雄(仮名)待てよ……これは神道の儀式だ。市が、公金を使って、特定の宗教の儀式を主催している。
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辰雄(仮名)は、裁判を起こした。
辰雄(仮名)市長は、違法に支出した7,663円を津市に返せ。地方自治法にもとづく住民訴訟だ。
レイあわせて、信教の自由を侵害されたとして、慰謝料も求めました。
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憲法は、国と宗教の関わりに、はっきり線を引いている。
レイ20条1項後段と3項、89条。『国及びその機関は、宗教的活動をしてはならない』『宗教団体のために公金を支出してはならない』——政教分離の原則です。
みょうぶそれなら、地鎮祭はアウトじゃん。思いっきり宗教の儀式でしょ。
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だが、判断は割れた。
レイ一審の津地裁は『単なる習俗的な行事』として合憲。二審の名古屋高裁は『宗教的活動そのもの』として違憲とし、市長に7,663円の支払いを命じました。
みょうぶどっちなのよ……
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最高裁大法廷。昭和52年7月13日。15人の裁判官による判断が下された。
裁判長原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。被上告人の請求を棄却する。
辰雄(仮名)……合憲、ということか。
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最高裁は、政教分離の意味そのものを定義し直した。
レイ国家と宗教の関わり合いを、一切合切禁止しているわけじゃない。目的と効果に照らして、相当とされる限度を超える場合にだけ許されない——これが『目的効果基準』です。
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この基準を、起工式にあてはめる。
レイ目的は『土地の平安堅固と工事の無事安全を願う、専ら世俗的なもの』。効果も『神道を援助、助長、促進し、又は他の宗教に圧迫、干渉を加えるものとは認められない』——だから20条3項の『宗教的活動』にはあたらない、としたんです。
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ただし、全員一致ではなかった。
レイ15人中5人の裁判官が反対意見を書いています。『国が神式の儀式を主催すること自体、すでに政教分離に反する』——もっと厳格に分離すべきだという立場です。
みょうぶ5人も……僅差だったんだ。
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この『目的効果基準』は、その後も使われ続けている。
レイ後の政教分離訴訟は、みんなこの物差しで判断されています。憲法20条1項後段・3項、89条——この3つの条文の読み方を決めた一件なんです。
みょうぶ一回の地鎮祭が、ずっと先まで効いてるんだ。
この判例のポイント
この事件の対立軸は「国家と宗教の関わり合いを一切認めないのか、それとも一定の関わり合いまでは許容するのか」という、政教分離原則そのものの理解の仕方にあります。二審の名古屋高裁は前者に近い立場から違憲と判断しましたが、最高裁大法廷はこれを覆し、後者の立場——目的効果基準——を採用しました。
目的効果基準は二段構えです。①その行為の目的が宗教的意義をもつか、②その効果が特定の宗教を援助・助長・促進し、又は圧迫・干渉するものかどうか。本件では、起工式の目的は土地の平安堅固と工事の安全を願う「専ら世俗的なもの」であり、その効果も神道を特別に援助するものとは認められない、とあてはめられました。
答案では、いきなり結論(合憲・違憲)を書かないことが大切です。①政教分離原則の趣旨(信教の自由の制度的保障)を確認し、②憲法が国と宗教の一切の関わりを禁じているわけではないことを示したうえで、③目的効果基準という判断枠組みを定立し、④事実に即してあてはめる——この順序を踏むと、原則と例外の関係が崩れません。15人中5人が反対意見を書いたことにも触れられると、論点の重さが伝わります。
会話は読みやすさのための脚色です。登場人物名はすべて仮名で、金額や日付、判決文の判断枠組みは判決の認定にもとづいています。
出典
- 最高裁判所大法廷判決 昭和52年7月13日(津地鎮祭事件、昭和46年(行ツ)第69号、民集31巻4号533頁)
- 名古屋高等裁判所判決(控訴審、原審の事実認定・起工式の費用内訳を確認)(新しいタブで開く)
- 日本国憲法20条・89条(新しいタブで開く)