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判例マンガ

27年目の無罪 — 財田川事件

刑事訴訟法/高松地方裁判所 昭和59年(1984年)3月12日判決(再審・無罪)

死刑確定後、再審によって無罪となった事件。再審を開くための「明らかな証拠」の意味が問われた

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    1950年(昭和25年)2月28日。香川県三豊郡財田村(現・三豊市)。

    レイ今日の判例は、死刑が確定したあとに無罪となった事件です。

    みょうぶ死刑が確定した……あとに……? そんなことが本当にあるの?

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    闇米を扱っていた商人の男性(62歳)が、自宅で何者かに刺殺された。全身30か所近くを刺され、現金1万3千円あまりが奪われていた。

    レイ当時の1万3千円は、今の感覚でいえば数十万円規模にあたります。

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    同年4月、19歳の青年・清志(仮名)が逮捕された。だが容疑は、隣村の農協で起きた別の強盗傷害事件だった。

    みょうぶ別の事件で捕まった人が、どうしてこの殺人の犯人に?

    レイ約2か月にわたる取調べの末、清志さんはこの殺人についても自白したんです。

    清志(仮名)……自分が、やりました。

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    昭和27年2月20日、高松地裁丸亀支部は死刑を言い渡した。有罪の決め手とされた物証は、犯行時のものとされる国防色の古いズボン一着だけだった。

    裁判長被告人を、死刑に処する。

    清志(仮名)やっていない……自分は、やっていない……

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    控訴、上告、いずれも退けられ、昭和32年1月22日、死刑判決が確定した。

    みょうぶ確定……してしまったんだ。

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    みょうぶは、まだ納得できなかった。

    みょうぶ自白したんでしょ? それなら、仕方ないんじゃ……

    レイのちに清志さんは、取調べでの自白は強要されたものだったと訴えています。でも、一度確定した判決を覆すのは簡単なことではありません。裁判には『これで終わり』と社会を安定させる役目もあるからです。

    みょうぶでも、もし無実だったら……

    レイそれでも開く扉が『再審』という制度です。ただ、その扉は長いあいだ、とても重く閉ざされていました。

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    最初の再審請求は、昭和33年に退けられた。清志さんが証拠の再鑑定を求めて書いた手紙は、5年ものあいだ放置され、ようやく発見されたのは昭和44年だった。

    レイ審理を担当した矢野伊吉という裁判官は、やがて裁判官を辞め、清志さんの弁護人になりました。

    みょうぶ裁判官が、弁護士に……? そこまでして?

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    昭和47年9月30日、地裁は三度目の再審請求も退けた。

    清志(仮名)何度やっても、開かないのか……

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    転機は昭和51年10月12日。最高裁第一小法廷は、前年に示されたある基準を使い、原決定を取り消して審理を財田川の件に差し戻した。

    レイその基準とは――新しい証拠が、確定判決の事実認定に合理的な疑いを生じさせるなら、再審を開くに足りる、というものです。

    みょうぶ『疑わしきは被告人の利益に』を、再審にも使うってことか。

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    昭和54年6月7日、高松地裁は再審開始を決定。検察官の即時抗告も昭和56年3月14日に退けられ、再審公判への道が確定した。

    レイようやく、審理が開かれる番になりました。

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    昭和59年3月12日。逮捕から34年、死刑確定から27年。

    裁判長被告人は、無罪。

    みょうぶ……無罪。

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    無罪の理由は、自白の内容が取調べのたびに不自然に変遷していたこと。そして唯一の物証だったズボンを、清志さんが着ていたと示す証拠が、どこにもなかったことだった。

    レイ検察官は控訴せず、判決は確定しました。清志さんは、その日のうちに釈放されました。

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    刑事訴訟法435条6号――再審を開くための「明らかな証拠」の意味を、この事件は実際に書き換えた。

    レイ財田川事件は、死刑確定後に再審で無罪となった、免田事件に続く2件目の事件です。のちに松山事件、島田事件と続きます。

    みょうぶ確定判決は、絶対じゃない……それを、現実の34年間で示した事件なんだね。

この判例のポイント

この事件で押さえるべきは、「自白したかどうか」ではなく、「一度確定した判決を、あとからどこまで動かせるか」という再審制度の構造です。清志さん(仮名)は取調べの末に自白していますが、裁判所が最終的に無罪としたのは、その自白と唯一の物証の信用性そのものが崩れたからです。

再審を開くための要件は、刑事訴訟法435条6号「無罪……を言い渡すべき明らかな証拠をあらたに発見したとき」です。財田川事件で最高裁が示した基準は、この「明らかな証拠」を、単独で無罪を直接証明する証拠に限定せず、他のすべての証拠と総合して評価したときに確定判決の事実認定に合理的な疑いを生じさせるもので足りる、というものでした。確定判決を守る法的安定性と、無実の人を罰しないという要請の、どちらを優先するかという価値判断がここにあります。

答案での書き方は、まず刑事訴訟法435条6号の文言(「明らかな証拠」)を示し、これをどう解釈するかに争いがある、と問題提起します。そのうえで、厳格に解する立場(新証拠単独で無罪を証明できること)と、総合評価で足りるとする立場(新証拠を他の証拠と総合して合理的な疑いが生じれば足りる)を対置し、後者を規範として立てたうえで、新証拠(自白の変遷・物証の不備)を既存の証拠と総合してあてはめる、という順序で書きます。

財田川事件の判決文そのもの(最高裁決定・高松地裁判決)には、今回一次資料として直接は当たれませんでした。裁判所が公開する判決PDFが調査時点で閲覧できなかったためです。本稿の事実関係は、複数の独立した事典・法律解説の資料を突き合わせて構成しています。登場人物名(清志)は仮名で、会話は読みやすさのための脚色です。

出典