本文へスキップ
人生設計読了 約11分

人生の目標が思いつかない時の決め方 — 目標より先に「価値観3つ」を決める

<!-- intent: 「目標を決めたいのに何も浮かばない」人が、今日その場で1つ決め切るための手順を知りたい | satisfied: 価値観3つ→10年→1年→今月→今日の順に紙1枚を埋め終え、「目標 例」「やりたいこと 見つけ方」を再検索する必要が無くなった状態 | excluded: 目標の例・やりたいこと100リスト(選択肢を増やすほど決められなくなるため) / 診断ツールや適職診断の紹介(他人の出した答えを読む行為で、次の一手が増えないため) -->

目標の前に価値観3つ — 思いつかないのは順番の問題です

人生の目標が思いつかないのは、意欲や才能の問題ではありません。多くの場合、「選ぶ基準」を持たないまま選択肢を探しているという、順番の問題です。 先に決めるべきなのは目標ではなく、自分が何を大事にしているかという価値観3つです。この記事では、価値観3つ→10年後の問い→1年後の到達点→今月→今日、の順に降ろしていく紙1枚の手順を、心理学の査読論文2本(専門家の審査を通った研究)と孫子の兵法の一節から組み立てて紹介します。アプリは使わなくても最後まで進められる形にしてあります。

「思いつかない」のは、選び方の順番が逆になっているからです

人生の目標が思いつかない一番の原因は、基準を持たないまま選択肢を探していることです。「自分の目標は何か」と問われても、何を基準に選べばいいのか決まっていなければ、どんな案も同じくらいピンときません。

目標から探す順番と、価値観3つから降ろす順番の対比図
左=目標から探して行き止まりになる順番、右=価値観3つから今日の一手まで降ろす順番

この状態で「人生の目標の例100選」のような一覧を読むと、かえって決まらなくなります。選択肢は増えますが、選ぶ基準は1つも増えないからです。基準が無いところに選択肢を積むのは、ものさしを持たずに布を切ろうとするのと同じです。

逆に、基準が先にあれば目標は「探すもの」ではなく「組み立てるもの」になります。価値観を3つ書き出した瞬間に、目標の候補はほとんど自動的に絞られます。順番を入れ替えるだけで、同じ頭で考えても結論が出るようになります。

選択肢が増えると、人は決められなくなります

選択肢の多さが決定そのものを妨げることは、心理学の実験で繰り返し確認されています。もっとも有名なのが、コロンビア大学のアイエンガーとスタンフォード大学のレッパーによる「ジャムの実験」です。

高級食料品店に試食ブースを出し、ジャムを24種類並べた日と6種類だけ並べた日を比べました。足を止めた人の割合は24種類の日の方が多かったのに、実際に購入したのは6種類の日が試食者の約30%、24種類の日は約3%でした。種類を減らした方が、買うという決定は約10倍起きやすかったわけです。

出典: Iyengar, S. S., & Lepper, M. R. (2000). "When choice is demotivating: Can one desire too much of a good thing?" Journal of Personality and Social Psychology, 79(6), 995–1006. PubMed(新しいタブで開く)

人生の目標は、ジャムよりはるかに選択肢が多い問いです。職業・住む場所・家族・学び・健康・人間関係——事実上無限の選択肢を、基準なしで一度に比べようとしている。これが「何も思いつかない」という感覚の正体です。

ここから導かれる対処は1つです。選択肢を増やす行為をやめて、候補をふるい落とす基準を先に作る。それが次の節の価値観にあたります。

続く目標の条件は「立派さ」ではなく「自分との一致」です

どんな目標なら人は続けられるのか。これにも一次研究の答えがあります。ミズーリ大学のシェルドンとロチェスター大学のエリオットは、学生を追跡する縦断研究(同じ人を時間をおいて何度も測る調査)で、目標を選んだ理由が結果を分けることを示しました。

「本当に興味がある」「自分の価値観に合っている」という理由で選んだ目標(自己一致目標)を追った人は、努力が持続しやすく、達成しやすく、達成したときの満足の上がり幅も大きかった。一方で「そうすべきだから」「他人に評価されるから」という理由の目標は、同じだけ努力を投じても満足に結びつきにくかったと報告されています。

出典: Sheldon, K. M., & Elliot, A. J. (1999). "Goal striving, need satisfaction, and longitudinal well-being: The self-concordance model." Journal of Personality and Social Psychology, 76(3), 482–497. PubMed(新しいタブで開く)

つまり、世間的に立派な目標を輸入しても続きにくい。自分の価値観を先に言語化し、そこから目標を組み立てる順番に意味があるのは、この研究が示す「一致」が持続の条件だからです。基準を先に作ることは、決めやすくするためだけでなく、決めた後に続けるためでもあります。

孫子も「勝ち筋を先に決めてから戦う」と書いています

同じ考え方は、2500年前の兵法書にもあります。『孫子』の軍形篇にこの一節があります。

原文: 勝兵先勝而後求戰、敗兵先戰而後求勝。 読み: 勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝を求む。 現代語訳: 勝つ軍は、先に勝てる状態を作っておいてから戦いを始める。負ける軍は、まず戦いを始めてから勝ちを求める。

>

底本: 金谷治訳注『新訂 孫子』(岩波書店・岩波文庫、2000年)軍形篇 — 国立国会図書館サーチの書誌(新しいタブで開く)

戦いを始めてから勝ち方を探すのが負け方だ、と孫子は言っています。目標設定に置き換えると、行動を始めてから「何のためにやるのか」を探すのが、続かない型ということになります。

ここで注意したいのは、孫子が説くのは勇ましさではなく順番だという点です。基準(勝ち筋)を先に決めておけば、戦いは短く済む。価値観を3つ決めておけば、目標を考え直す時間は毎回短くて済みます。私たちがアプリの名前を「先勝」にしたのも、この一節が由来です。

紙1枚・20分でできる4ステップ

ここからが手順です。A4の紙1枚とペンだけで進められます。所要時間の目安は20分、途中で止まっても続きから再開できます。

人生の目標を決める4ステップ
  1. 価値観を3つ書き出す(基準をつくる)
  2. 10年後の問いに「仮の答え」を書く(方向を決める)
  3. 1年後の到達点に翻訳する(測れる形にする)
  4. 今月と今日の一手に割る(動き出す)

紙はこの形に区切ってください。そのまま写して使える雛形です。

■ 私の価値観(3つ)
  1.                     それが満たされた最近の場面:
  2.                     それが踏まれた最近の場面:
  3.                     それが踏まれた最近の場面:

■ 10年後の問い(仮の答えでよい)
  どう生きていたら満足か:
  絶対にそうなっていたくない姿:

■ 1年後の到達点(1つだけ)
  達成したと誰が見ても分かる状態:
  数字か頻度:

■ 今月のマイルストーン(1つだけ)
■ 今日の一手(今日のうちに終わる1行)

ステップ1: 価値観を3つ書き出す

最初に書くのは目標ではなく、価値観です。思い出す手がかりは2つで、この1年で強く腹が立った場面と、理由もなく満たされた場面です。

感情が大きく動いた場面には、守りたいものが埋まっています。「成果を横から取られて腹が立った」なら価値観は公正さ、「静かな朝にひとりで作業していて満たされた」なら価値観は集中や自律です。きれいな言葉に整える必要はありません。

3つに絞るのが大事です。5つ、10つに増やすと、前の節のジャムと同じことが自分の中で起きます。どれを優先するか決まっていない基準は、基準として働きません。

ステップ2: 10年後の問いに「仮の答え」を書く

次に、10年単位の問いに答えます。「どう生きていたら満足か」です。完成度は求めません。今日の時点の仮説として1〜3行書けば十分です。

書けない人は、裏から攻めてください。「10年後に絶対そうなっていたくない姿」は、たいてい即答できます。「満員電車に毎日乗っていたくない」「家族の顔を思い出せない忙しさは嫌だ」——否定形は、肯定形よりずっと簡単に出ます。

出た否定形を反転させると、方向になります。嫌なことの反対は、あなたが大事にしている価値観と必ずつながっています。ステップ1で書いた3つと矛盾していないか、ここで一度だけ見比べてください。

ステップ3: 1年後の到達点に翻訳する

10年の仮説を、1年後の「達成できたかどうかが誰の目にも分かる状態」に翻訳します。ここで初めて、いわゆる目標の形になります。

数字にできるなら数字にします。できないものは頻度で書いてください。「文章が上手くなる」は測れませんが、「週2回、1本ずつ公開する」なら測れます。数字にできないことを無理に数字にすると、測りやすいだけの的外れな目標になります。

この1年の到達点を、1つだけにするのが肝心です。複数あるとまた選べなくなります。残りは紙の裏に書いておけば消えません。より細かい分解の型は目標の立て方テンプレート(目的→1年→今月→今日の4層分解)にまとめてあります。

ステップ4: 今月と今日の一手に割る

最後に、1年の到達点を今月のマイルストーン1つと、今日終わる1行まで割ります。「週2回1本公開する」なら、今月は「書く時間を朝に固定する」、今日は「明日の朝30分を予定表に入れる」です。

今日の一手の条件は、今日のうちに終わることだけです。大きさは関係ありません。ここで紙が完成し、人生の目標が「思いつかないもの」から「書いてあるもの」に変わります。

目標が壮大でないと意味がないと感じる人は、人生の目的の見つけ方(「探す」のをやめて「設計する」に切り替える)も合わせて読んでください。目的は探し当てるものではなく、更新していく設計図だという考え方を詳しく書いています。

それでも1行も書けない時の抜け道

手が止まるパターンはだいたい4つです。症状ごとに、先に書くものを入れ替えてください。

行き詰まり方先に書くもの書き方の例
価値観が1つも浮かばないこの1年で腹が立った場面を3つ「成果を横取りされた」→ 価値観は公正さ
浮かぶが全部きれいごとに見える誰にも見せない前提で書き直す「社会貢献」→「人に必要とされたい」
10年後がまったく想像できない「10年後にそうなっていたくない姿」「満員電車に乗っていたくない」
1年の到達点が決まらない数字をあきらめて頻度で書く「週2回、30分以上」

書けない日が3日続いたら、紙を開く時間が悪い可能性があります。価値観を思い出す作業は、疲れている夜より朝の方が進みます。これは意志の強さではなく置き場所の話で、「継続力がない」は誤診 — 続くかどうかは環境設計で決まるで詳しく扱っています。

先勝ではこうなる

この手順をそのまま1枚の画面にしたのが、私たちの成長アプリ 先勝(Sensho)(sensho.juriscodeai.com(新しいタブで開く))です。無料・広告なしのベータとして公開しています。

アプリ側では「軍略」という1枚のシートに、価値観を3つ以上書く欄と1年後の到達点の欄が並んでいます。そこに書いた内容から目標と「今日の一手」が分解されていくので、紙でやった時の毎回書き写す手間が無くなるのが実際の差です。やったことは連続記録とヒートマップで埋まっていき、段位という形で積み上がりが見えます。

ただし、この記事の手順は紙だけで完結します。アプリは紙の置き場所を固定して、見返す回数を増やすための道具です。順番を先に決めることが本体で、道具はその後の話です。人生設計と目標設定の記事は人生設計の棚にまとめています。

よくある質問

Q. 価値観から考えるより、「やりたいことリスト100個」を書く方が早いのではないですか?

リストは発散には向きますが、決定には向きません。選択肢が増えるほど決定が起きにくくなることは前述のジャムの実験で示されており、100個の案を基準なしに並べると、24種類のジャムと同じ状態になります。100個書くなら、書いた後に価値観3つでふるいにかける手順を必ず足してください。

Q. 価値観を3つに絞ると、可能性を狭めることになりませんか?

狭めるのが目的です。基準は、候補を落とすために作ります。ただし3つは固定ではなく、半年から1年ごとに書き直すものと考えてください。狭めて進み、違ったら書き直す方が、広いまま止まっているより情報が増えます。

Q. 人生の目標は壮大でなければ意味がないのではないですか?

研究が示しているのは規模ではなく一致です。自己一致モデルの研究で持続と満足に効いていたのは目標の大きさではなく、「自分の価値観に合っているか」という選んだ理由でした。「家族と夕食を食べる日を週4回にする」でも、価値観と一致していれば目標として働きます。

Q. 決めた目標が途中で変わってしまったら、やり直しですか?

やり直しではありません。変わるのは1年の到達点や今月のマイルストーンで、価値観3つはそう頻繁には変わりません。基準が残っているので、下の層だけ差し替えれば済みます。これが「目標から探す」順番との実用上の一番の差です。

Q. アプリを使わないと結局続かないのではないですか?

紙でも続きます。続くかどうかを分けるのは、紙がどこにあるか・いつ開くかという環境側の条件です。冷蔵庫に貼る、手帳の1ページ目に挟む、といった固定だけで見返す回数は変わります。アプリはその固定を自動化する選択肢の1つにすぎません。


関連記事

コメント

コメントは即時公開されます。不適切な内容は予告なく削除します。

#人生設計#目標設定#先勝