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判例マンガ

告知なき命令 — 成田新法事件

憲法/最高裁判所大法廷 平成4年(1992年)7月1日判決

行政処分に事前の告知・弁解・防御の機会がなくても、憲法31条の定める適正手続の保障に違反しないとされた事件

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    昭和53年(1978年)、新東京国際空港(成田空港)。開港を目前に控えていた。

    レイ空港の建設には、強い反対運動がありました。支援する過激派集団による実力闘争も、激しく展開されていたんです。

    みょうぶ実力闘争って、穏やかじゃないね……

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    供用開始を目前にした3月26日、過激派集団が空港内に突入した。

    レイ火炎びんを投げ込み、管制塔に侵入してレーダーなどの航空管制機器を破壊しました。開港予定日は、5月20日まで延期せざるを得なくなります。

    みょうぶ空港が、開けなくなっちゃったの……

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    国会は、衆参両院とも全会一致・全党一致で、この暴挙を断じた。

    レイ政府に暴力排除の断固たる処置を求める決議が採択され、議員提案により、ひとつの法律が作られました。『新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法』——通称、成田新法です。

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    法律は、空港の規制区域内にある『工作物』の使用を禁止する仕組みを定めた。

    レイ規制区域内の建築物が、多数の暴力主義的破壊活動者の集合に使われるおそれがあると認めるとき、運輸大臣は、期限を付けてその使用を禁止できる——法3条1項です。

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    千葉県山武郡のある場所に、通称『横堀要塞』と呼ばれる建物があった。所有者は哲郎(仮名)。

    レイ鉄骨鉄筋コンクリート、地上3階・地下1階建て。東西11.47メートル、南北11.5メートル、高さ約10メートル。

    みょうぶ普通の建物っぽいけど?

    レイ窓も出入口もありません。中に入るには、地上から梯子をかけて屋上に昇り、そこから入るんです。地下には緊急時用のトンネルまで掘られていました。

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    昭和60年(1985年)2月1日の公告。運輸大臣は、この建物に使用禁止命令を出した。

    運輸大臣昭和60年2月6日から61年2月5日まで、当該工作物を暴力主義的破壊活動者の集合の用に供することを禁止する。

    哲郎(仮名)待ってくれ。弁明の機会すら、一度もなかったぞ。

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    哲郎(仮名)は、命令の取消しと国家賠償を求めて訴えた。争点のひとつが、憲法31条だった。

    みょうぶ31条って、刑事事件の条文じゃなかった?

    レイそこなんです。31条は『何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない』——文言上は、刑事手続についての条文です。

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    それでも、この事件の核心的な問いは消えなかった。

    レイ行政処分だって、人の財産権や居住の自由を大きく制限します。言い分も聞かずに一方的に命令を出していいのか——これが、この事件がずっと問われてきたことなんです。

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    平成4年(1992年)7月1日。最高裁判所大法廷。

    裁判長本法3条1項は、憲法31条の法意に反するものではない。上告人のその余の上告を棄却する。

    哲郎(仮名)そんな……告知も弁解の機会も無いのに、合憲なのか。

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    判決は、まず原則を述べた。

    レイ『憲法三一条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。』

    みょうぶじゃあ、31条は行政処分にも及ぶんだ!

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    けれど、そこに大きな留保が続く。

    レイ『行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは……制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではない』

    みょうぶ及ぶけど、いつも必要とは限らない……か。

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    この事件への当てはめ。

    レイ命令で制限される利益は、暴力主義的破壊活動者が工作物を集合に使う利益にすぎません。対して守られる公益は、新空港の安全確保——国家的・社会経済的・公益的・人道的見地から、極めて強く要請される、高度かつ緊急のものでした。

    レイこの両者を比べれば、事前手続の規定がなくても31条の法意には反しない——多数意見は、そう結論づけました。

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    判決には、園部逸夫裁判官と可部恒雄裁判官の意見が付されている。結論は同じでも、理由は異なる。

    レイお二人とも『本件の結論には同調する』としつつ、不利益処分には原則として事前手続を置くべきだという立場をより強く述べています。

    みょうぶ同じ結論でも、考え方は一人ひとり違うんだね。

    レイはい。この判決の翌年、平成5年(1993年)には行政手続法が制定されました。行政処分に事前の告知・聴聞の仕組みを一般的に整える、大きな一歩です。

この判例のポイント

この事件でおさえるべきは、『31条は行政手続に及ぶか』という問いと、『及ぶとして、いつも事前手続が必要か』という問いが別物だということです。最高裁は前者を肯定しつつ、後者は否定しました。『行政手続には31条の保障が及びうる』という総論の部分だけを覚えて、『だから常に告知・弁解の機会が必要』と早合点すると、この判決の核心を見落とします。

判断の型は比較衡量です。①制限される権利利益の内容・性質・制限の程度、②行政処分が達成しようとする公益の内容・程度・緊急性——この2つを総合して、事前手続を欠くことが許されるかを決めます。本件では、制限される利益が『暴力主義的破壊活動者が工作物を集合に使う利益』という限定的なものだった一方、公益は新空港の安全という高度かつ緊急のものでした。この非対称さが、合憲という結論を導いています。

答案では、①31条の保障が行政手続に及ぶかを一般論として論じ、②及ぶとして事前手続が常に必要かを比較衡量の基準で示し、③その基準を本件の具体的な利益状況に当てはめる、という3段階で書くのが型です。①だけで『及ぶ、よって違憲』と飛びつくと、比較衡量という最高裁の核心部分が答案から消えてしまいます。

会話は読みやすさのための脚色です。人物名はすべて仮名で、事実関係と数値は判決文の認定にもとづいています。

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