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人生設計読了 約10分

目標設定が思いつかない時の3つの型 — 不足型・回避型・維持型から選ぶ

<!-- intent: 「何を目標にすればいいか分からない」人が、今日その場で目標を1つ決め切って今日の一手まで書き終えたい | satisfied: 不足型・回避型・維持型のどれかで自分の状況を言語化し、1つ選んで目的→1年→今月→今日の4層を紙に書き終え、「目標 例文」「目標設定 書き方」を再検索する必要が無くなった状態 | excluded: 目標の例文・文例集の列挙(写した目標は自分の価値観と一致せず続きにくいため) / SMART など枠組みの用語解説(候補が0本の人には次の一手が1つも増えないため) -->

思いつかない時の3つの型 — 不足型・回避型・維持型から1つ選ぶ

目標設定が思いつかないのは、候補が足りないからではありません。候補を出す「型」が決まっていないからです。 目標のもとになる材料は、足りないものを増やす不足型、避けたいことを遠ざける回避型、守りたいものを崩さない維持型の3つしかありません。この記事では、自分がいまどの型にいるのかを言葉にし、1つ選んで目的→1年→今月→今日の4層に降ろすまでを、紙1枚でできる形にまとめます。根拠は心理学の査読論文(専門家の審査を通った研究)3本と、孫子の兵法の原文です。

目標設定が思いつかないのは、候補ではなく「型」が無いからです

目標が浮かばない時に起きているのは、候補の不足ではなく問いの不在です。「何か目標を立てよう」という問いは広すぎて、どこから答えればいいのか分からないまま終わります。

試しに、問いを3つに割ってみてください。「いま足りないものは何か」「絶対に避けたいことは何か」「いま成り立っていて失いたくないものは何か」。この3つのどれかには、たいてい何かが浮かびます。浮かばないのではなく、聞かれていなかっただけです。

目標のもとは、不足型・回避型・維持型の3つです

目標の材料は、不足型・回避型・維持型の3つに分けられます。どれが正しいということはなく、いまの自分がどこにいるかで出やすい型が変わります。

不足型・回避型・維持型の3つの型と、選んだ1つを目的→1年→今月→今日の4層に落とす流れの図
足りない・避けたい・守りたいの3つの問いから1つ選び、4層に降ろす
型問いの形出てくる言葉の例向いている状況
不足型1年後に増えていてほしいものは何か「書く量を増やしたい」「資格を取りたい」余力があり、積み上げたい時
回避型1年後に絶対そうなりたくない姿は何か「残業で家族と話せない日をなくしたい」不満の原因が明確な時
維持型いま成り立っていて、失いたくないものは何か「週3日の運動を切らしたくない」忙しく、増やす余地が無い時

多くの記事が前提にしているのは不足型だけです。だから「増やしたいものが思いつかない」人は、自分には目標が無いのだと感じてしまいます。疲れている時期に出てくるのは回避型と維持型で、これは意欲の低下ではなく、いまの状況に合った型が違うだけです。

会社の評価シートが埋まらない時も、同じ3つの問いが使えます。職場ではまず維持型、つまり「いま回っていて落としてはいけない業務は何か」から書き、そこへ不足型を1つ足すと背伸びしすぎない目標になります。

回避型が出た時は、言い換えてから使います

回避型の言葉が最初に出るのは自然なことです。ただし、そのままの形で1年追い続けるのは勧められません。

ロチェスター大学のエリオットらは、学生が自分で挙げた個人的な目標を学期を通して追跡し、「〜しないようにする」という回避の形で立てている人ほど、主観的幸福感(本人が感じる満足や気分の良さ)が低くなる傾向を報告しています。振り返りの評価でも、時間をおいて測り直した評価でも同じ方向でした。

出典: Elliot, A. J., Sheldon, K. M., & Church, M. A. (1997). "Avoidance personal goals and subjective well-being." Personality and Social Psychology Bulletin, 23(9), 915–927. SAGE(DOI)(新しいタブで開く)

「残業をなくす」が目標だと、達成した日に増えるものが何も無く、点検するたびに「まだ残っている」という確認作業になります。そこで回避型は材料としては使い、目標の文としては言い換えるのが実務的です。「残業で家族と話せない日をなくす」なら「家族と夕食をとる日を週4日にする」に直します。避けたいことは、たいてい守りたいものの裏返しです。

守りたいものを目標にする時は、点検の仕方が変わります

維持型の目標は、立て方ではなく点検の仕方に注意が必要です。「増えたか」ではなく「満足できているか」で見ます。

ミネソタ大学のロスマンは、行動を始める時の判断と続ける時の判断は別のものだと整理しました。始める時は「この先よくなりそうだ」という期待で決まり、続ける時は「ここまでで得られたものに満足しているか」で決まるという考え方です。

出典: Rothman, A. J. (2000). "Toward a theory-based analysis of behavioral maintenance." Health Psychology, 19(1, Suppl), 64–69. ミネソタ大学の書誌(新しいタブで開く)

維持型に「前月より増えたか」という尺を当てると、続いているのに毎回うまくいっていないように見えます。週3日の運動を1年続けている人にとって、前進が無いのは成功の形です。ですから紙には、数字の欄とは別に「この1か月、続けていて満足だったか」という1行を作ってください。

孫子は「まず負けない形」を先に作れと書いています

同じ順番が、2500年前の兵法書にも書かれています。『孫子』の軍形篇の冒頭です。

原文: 昔之善戰者、先爲不可勝、以待敵之可勝。 読み: 昔の善く戦う者は、先ず勝つべからざるを為して、以て敵の勝つべきを待つ。 現代語訳: 昔の戦上手は、まず自分が負けない態勢を作り、そのうえで相手に勝てる機会が来るのを待った。

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底本: 金谷治訳注『新訂 孫子』(岩波書店・岩波文庫、2000年)軍形篇 — 国立国会図書館サーチの書誌(新しいタブで開く)

孫子が先に置いているのは、勝つ手ではなく崩れない形です。目標設定に移すと、まず維持型で土台を確かめ、そのうえで不足型を1つ足すという順番になります。守りに入れという話ではなく、崩れない形があるから攻める1つに集中できるという話です。

紙1枚・15分で「型 → 1つ → 4層」に落とす

ここからが手順です。A4の紙1枚とペンだけで進められ、目安は15分です。アプリは使いません。

目標設定が思いつかない時の4ステップ
  1. 3つの問いに思いつく順で書き出す(型を決めない)
  2. 出た言葉に型の名前を付ける(不足・回避・維持)
  3. 1つだけ選び、回避型なら言い換える
  4. 目的→1年→今月→今日の4層に降ろす

紙はこの形に区切ります。そのまま写して使える雛形です。

■ 3つの問い(思いつく順に、各2〜3行)
  足りない:
  避けたい:
  守りたい:

■ 選んだ1つ(型:        )
  言い換え後の文(「〜をなくす」で終わらせない):

■ 4層に降ろす
  目的 (何のためか・1行):
  1年 (誰が見ても分かる状態 / 数字か頻度):
  今月(1つだけ):
  今日(今日のうちに終わる1行):

■ 点検(維持型の時だけ)
  この1か月、続けていて満足だったか:

ステップ1・2: 書き出して、型の名前を付ける

最初から型を決めず、3つの問いを上から読んで浮かんだ言葉をそのまま書きます。単語で構いません。空欄があっても気にしないでください。空欄は、いまそこに関心が無いという情報です。

次に、書いた言葉の横に「不足」「回避」「維持」と書き込みます。自分がどの状態にいるのかを言葉で確認する作業で、回避ばかりが並ぶ時は疲れている時期だと読めます。

ステップ3: 1つだけ選び、回避型は言い換える

選ぶのは1つだけです。2つ以上残すと、また選べない状態に戻ります。残りは紙の裏に書いておけば消えません。

選び方は単純で、書いた時にいちばん体温が上がった言葉を採ります。「正しそうな方」ではなく「気になる方」です。選んだ理由が自分の中にある目標の方が努力が持続しやすいことは、縦断研究(同じ人を時間をおいて何度も測る調査)で報告されています。

出典: Sheldon, K. M., & Elliot, A. J. (1999). "Goal striving, need satisfaction, and longitudinal well-being: The self-concordance model." Journal of Personality and Social Psychology, 76(3), 482–497. PubMed(新しいタブで開く)

ステップ4: 4層に降ろす

選んだ1つを目的→1年→今月→今日の4層に割ります。1年は数字か頻度で書き、数字にできないものは無理に数字にしません。

いちばん大事なのは今日の欄です。「いつ・どこで・何をするか」まで書いた計画は、書かない場合より実行されやすいことが分かっています。ゴルヴィツァーとシーランは、94件の独立した検証(63本の報告)をまとめ、この書き方が目標の達成に中〜大の効果(効果量 d=0.65)を持つと報告しました。

出典: Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). "Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes." Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69–119. DOI(新しいタブで開く)

ですから今日の欄は「資料を読む」ではなく「今夜21時に机で、第1章を10ページ読む」と書きます。4層それぞれの書き分け方は目標の立て方テンプレート(目的→1年→今月→今日の4層分解)にまとめています。

型を選び間違えた時のサイン

型が合っていないと、紙を開くのが苦しくなります。症状ごとに、どう替えるかを決めておくと立て直しが早くなります。

合っていない時

  • 達成しても何も増えた感じがしない
  • 毎月「まだできていない」の確認で終わる
  • 紙を開くと気が重い・3日開けていない
  • 1年の欄に3つ以上書いてある

替えた後

  • 回避型を不足型か維持型に言い換える
  • 維持型に替え、満足の1行で点検する
  • 今日の欄を1つに絞り、時間と場所を書く
  • 1つだけ残し、残りは紙の裏へ写す

3日続けて紙を開けない時は、意志の問題ではなく置き場所と時間の問題として扱ってください。

先勝ではこうなる

この手順を1枚の画面にしたのが、JurisCode.AI の成長アプリ 先勝(Sensho)(sensho.juriscodeai.com(新しいタブで開く))です。無料・広告なしのベータとして公開しています。

先勝では「軍略」という1枚のシートに、大事にしたいことを書く欄と1年後の到達点の欄が並び、そこから目標と「今日の一手」が分解されていきます。紙でやった時に毎回書き写していた手間が無くなるのが実際の差で、やったことは連続記録とヒートマップに残り、積み上がりが段位という形で見えます。

ただし、この記事の手順は紙だけで完結します。アプリは紙の置き場所を固定して、見返す回数を増やすための道具です。人生設計と目標設定の記事は人生設計の棚にまとめています。

よくある質問

Q. 目標の例文を見て決める方が早いのではないですか?

例文は書き方の参考にはなりますが、決定の助けにはなりにくいです。選んだ理由が自分の外にある目標は、同じだけ努力しても満足に結びつきにくいことが自己一致モデルの研究で示されています。例文を見るなら、3つの問いに自分の言葉を書いた後に、表現を整えるためだけに使ってください。

Q. 回避型は悪い目標だから使ってはいけない、ということですか?

いいえ。「避けたいこと」は否定形で出てくるので肯定形より早く言葉になり、材料としては優れています。問題は、否定形のまま1年追うと、達成しても何も増えない点検になることです。材料として採り、文にする時に言い換えてください。

Q. 維持型だけでは成長しないのではないですか?

維持型は現状維持ではなく、崩れない形を確認する作業です。孫子が先に「負けない態勢」を置いたのと同じ順番で、土台を確かめてから不足型を1つ足します。忙しい時期に不足型を3つ並べて全部止まるより、維持型1本に不足型1本を足した方が実際に進みます。

Q. 3つの問いを全部書いたのに、どれも選べません。どうしますか?

選ぶ基準そのものが無い状態かもしれません。その時は、目標より先に自分が大事にしていることを3つ書く順番に切り替えてください。やり方は人生の目標が思いつかない時の決め方(目標より先に「価値観3つ」を決める)にまとめています。


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#人生設計#目標設定#先勝

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