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人生設計読了 約11分

人生の目標の立て方 — 「立派な目標」を輸入せず、4つの理由で採点して選ぶ

<!-- intent: 候補はいくつかあるが「どれをどう立てれば続くのか」が分からない人が、1本に絞って今日書き切るための手順を知りたい | satisfied: 候補3つを4つの理由で採点して1本を選び、「いつ・どこで・何を」の1行まで書き終え、「目標設定 シート」「目標 例文」を再検索する必要が無くなった状態 | excluded: 目標の例文・やりたいことリスト100(他人の答えを読む行為で、選ぶ基準が増えないため) / SMARTなど頭字語の各語の解説(候補を1本に絞る作業を前に進めないため) -->

4つの理由で目標を採点する — 人生の目標の立て方 — 紙1枚・30分

人生の目標の立て方は、「立派な目標を考える」作業ではありません。候補を3つ出し、それぞれに「なぜやるのか」を4つの理由で採点して1本に絞り、「いつ・どこで・何を」の1行に翻訳する——この3工程です。 続かない目標のほとんどは、能力不足ではなく、他人の基準から輸入してきた目標を選んでしまったことが原因です。

この記事では、心理学の査読論文(専門家の審査を通った研究)2本と孫子の兵法の原文を手がかりに、紙1枚・30分で終わる採点表の作り方を書きます。アプリは使わなくても最後まで進められます。

人生の目標の立て方は、3つの工程に分かれます

目標を立てる作業は、「出す」「選ぶ」「翻訳する」の3つに分けると進みます。多くの人がつまずくのは真ん中の「選ぶ」で、ここに基準が無いまま候補を眺め続けるので、時間だけが過ぎます。

候補を3つ出し、4つの理由で採点して1本に絞り、いつ・どこで・何をの1行に翻訳する3工程
人生の目標の立て方 — 出す・採点する・1行に翻訳する

工程1は量を増やさないのがコツです。工程2では「その目標が立派かどうか」ではなく「自分がなぜそれをやりたいのか」を見ます。工程3は、選んだ1本を明日の自分が実行できる形にする作業です。

なお、1本に絞った目標を1年・今月・今日へ割っていく分解の手順は、目標の立て方テンプレート — 目的→1年→今月→今日の4層分解に分けて書いてあります。この記事は、その前段である「何を目標にするか」を担当します。

なぜ「立派な目標」は続かないのですか

続くかどうかを分けているのは、目標の立派さではなく、選んだ理由が自分の中から出ているかどうかです。心理学ではこれを自己一致(セルフコンコーダンス)と呼びます。

シェルドンとエリオットは1999年、大学生が学期のはじめに立てた個人的な目標を学期末まで追いかけた3つの縦断研究(同じ人を時間をおいて繰り返し調べる研究)を発表しました。そこで示されたのは、自分の価値観や関心と一致した理由で選んだ目標を持つ人ほど、学期を通じて努力が続き、達成しやすく、達成したときの満足の上がり幅も大きいという連鎖です。逆に「そうすべきだから」という理由の目標は、同じだけ努力を注いでも満足に結びつきにくい、と報告されています。

出典: Sheldon, K. M., & Elliot, A. J. (1999). "Goal striving, need satisfaction, and longitudinal well-being: The self-concordance model." Journal of Personality and Social Psychology, 76(3), 482–497. doi:10.1037/0022-3514.76.3.482(新しいタブで開く)(PubMed(新しいタブで開く))

ここで重要なのは、この研究が「理由」を気分の話として扱わず、4つの区分に分けて採点できる形にしたことです。同じ「英語を勉強する」でも、昇進条件だから選んだのか、やっていて面白いから選んだのかで、別の目標として扱われます。立て方の実務に直せば、候補を眺めて悩む代わりに、理由を採点すればよいということになります。

工程1: 候補を3つだけ書き出す

候補は3つで止めます。選択肢を増やすほど決めにくくなるので、ここは意図的に絞ります。

書く材料は、次の3つの問いのどれかから拾ってください。どれも「正解」を探す問いではなく、いま自分の中にあるものを外に出す問いです。

  • ここ半年で、時間を忘れてやっていたことは何ですか
  • 誰かのどんな状態を見ると、自分のことのように悔しくなりますか
  • 1年後に「これができていなかったら嫌だ」と思うことは何ですか

出てきたものを、そのまま3行で書きます。この時点では「痩せる」「英語をやる」程度の粗さで構いません。粒度をそろえるのは、1本に絞ったあとの作業です。

もし1行も出てこない場合は、目標より先に価値観を決める順番に切り替えるほうが早いです。その手順は人生の目標が思いつかない時の決め方にまとめました。

工程2: 4つの理由で採点して、1本に絞る

ここが人生の目標の立て方の中心です。候補3つそれぞれについて、「なぜそれをやるのか」を4つの理由に分けて0〜4点で採点します。

理由の種類自分への問い符号
外からの圧力やらないと、誰かに責められたり不利になったりするからですか−
自分への義務感やらない自分が後ろめたい、情けないと感じるからですか−
納得理由をうまく言えなくても、自分にとって大事だと思えるからですか+
面白さやること自体が面白い、やっている時間が好きだからですか+

4つは排他ではありません。1つの目標が4つとも高い点になることも、ふつうにあります。そのうえで、次の式で候補ごとのスコアを出します。

自己一致スコア =(納得 + 面白さ)−(外からの圧力 + 自分への義務感)

採点から1本に絞るまで(15分)
  1. 候補3つを紙の左に縦に並べ、右に「圧力・義務感・納得・面白さ」の4列を引きます
  2. 1候補ずつ、上の表の問いに0〜4点で答えて12マスを埋めます。考え込まず、直感の数字で構いません
  3. 候補ごとに(納得+面白さ)−(圧力+義務感)を計算し、スコアを右端に書きます
  4. 一番高い候補に丸を付けます。これが今期の1本です
  5. 残り2つは消さず、紙の下に「今はやらない」と書いて残します。捨てた記憶があると、後で何度も思い出して迷うからです

スコアが同点になったら、「面白さ」の点が高いほうを選びます。義務感だけで支えている目標は、忙しくなった週に真っ先に落ちるからです。

また、全候補のスコアがマイナスになることもあります。その場合は目標を立てる段階ではなく、候補の出どころが全部他人の基準になっている状態です。工程1の3つの問いに戻ってください。

工程3: 選んだ1本を「いつ・どこで・何を」の1行にする

選んだだけでは行動は変わりません。最後に、目標を実行の1行に翻訳します。

「Xという状況になったら、Yをする」という形であらかじめ決めておく技法は、心理学で実行意図(implementation intention)と呼ばれます。94件の独立した検証をまとめたメタ分析(複数の研究結果を統計的に束ねる分析)では、目標達成に対して効果量 d = 0.65(中〜大)という、行動の介入としては大きい効果が報告されています。

出典: Gollwitzer, P. M., & Sheeran, P. (2006). "Implementation intentions and goal achievement: A meta-analysis of effects and processes." Advances in Experimental Social Psychology, 38, 69–119. doi:10.1016/S0065-2601(06)38002-1(新しいタブで開く)38002-1)

書き方は単純で、「意志」ではなく「きっかけ」を先に書きます。

  • ✕ 英語を毎日やる
  • ○ 朝、コーヒーを淹れたら、キッチンの椅子で英語を15分やる
  • ✕ 運動を習慣にする
  • ○ 退勤して駅に着いたら、一駅分歩いて帰る

きっかけは、すでに毎日起きている行動にくっつけるほど安定します。新しい時間帯を作ろうとすると、その時間を守ること自体が2つ目の目標になってしまいます。

これで紙1枚が完成です。上に目標1本、下にきっかけ付きの1行。ここまでが「立てる」で、ここから先は分解と見直しの仕事になります。

孫子は「勝ちは、戦う前に決まっている」と書いています

目標の立て方に時間を使う根拠は、2500年前の兵法書にもあります。『孫子』の軍形篇にこの一節があります。

勝兵先勝而後求戰、敗兵先戰而後求勝。

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読み: 勝兵は先ず勝ちて而る後に戦いを求め、敗兵は先ず戦いて而る後に勝ちを求む。

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現代語訳: 勝つ軍は、勝てる条件を先に整えてから戦いに臨む。負ける軍は、まず戦いを始めてから勝ち目を探す。

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底本: 金谷治訳注『新訂 孫子』(岩波書店・岩波文庫、2000年改版)軍形篇 — 国立国会図書館サーチの書誌(新しいタブで開く)

軍形篇は「まず負けない形を作る」ことを説く篇です。勝敗を当日の勢いに預けず、始める前の条件づくりで決めてしまえ、という考え方が中心にあります。

目標に置き換えると、意味ははっきりします。走り出してから「この目標で合っているのか」と悩むのが後者で、走り出す前に理由を採点して合うものを選んでおくのが前者です。採点の30分は、迷いながら走る半年の代わりに払う前払いだと考えてください。

孫子を自己分析の軸として使う方法は孫子の「五事」で自己分析するに書いています。

先勝(Sensho)ではこうなる

この紙1枚をそのまま画面にしたのが、私たち JurisCode.AI の成長アプリ 先勝(Sensho)(sensho.juriscodeai.com(新しいタブで開く))です。無料・広告なしのベータとして公開しています。

アプリでは「軍略」という1枚のシートに、価値観と1年後の到達点を書く欄が並びます。そこから目標と「今日の一手」が分解されるので、紙でやったときの書き写す手間が無くなるのが実際の差です。やったことは連続記録とヒートマップに埋まっていき、段位という形で積み上がりが見えます。名前は孫子の軍形篇から取りました。

ただし、この記事の手順は紙だけで完結します。アプリは紙の置き場所を固定し、見返す回数を増やすための道具です。人生設計と目標設定の記事は人生設計の棚にまとめています。

よくある質問

Q. 「面白さ」で選ぶのは、楽な目標ばかりを選ぶことになりませんか

採点しているのは難易度ではなく理由なので、楽かどうかとは別の軸です。自己一致モデルの研究でも、負荷の低い目標が良いとは示されていません。示されたのは、同じ負荷なら、自分の価値観と一致した理由で選んだほうが努力が続きやすいという関係です。難しい目標ほど、支える理由の質が効いてきます。

Q. 義務感で立てた目標はすべて捨てるべきですか

いいえ、捨てる必要はありません。仕事の締切や資格の要件のように、理由の出どころが外にあっても取り組むべきことはあります。採点が役に立つのは、それを「人生の目標」として掲げるかどうかを分けるときです。外発的なものはタスクとして淡々と処理し、人生の目標の枠には自己一致スコアの高い1本を置く、という使い分けをおすすめします。

Q. 目標は1本だけですか。複数持ってはいけませんか

持っても構いませんが、最初は1本から始めることをおすすめします。採点の目的は選択肢を減らすことなので、3つとも採用すると作業の前後で状態が変わりません。1本を3か月回して手応えを確かめてから、2本目を足す順番が扱いやすいです。

Q. 3か月後に「これは違った」と思ったら失敗ですか

失敗ではありません。目標は仮説として扱うのが現実的です。自己一致スコアは、その時点の自分の状態を写したものなので、経験が増えれば点も動きます。3か月に一度、同じ4つの理由で付け直して、スコアが下がっていたら候補を入れ替えてください。立てた目標を守ること自体が目的になると、本末が逆になります。

Q. 紙とアプリ、どちらで始めるべきですか

紙で構いません。この記事の3工程は紙1枚で完結するように書いてあります。困るのは「書いた紙を見返さなくなる」ところなので、見返す回数が落ちてきたら道具を替える、くらいの順番で十分です。

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#人生設計#目標設定#先勝

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