リフォームの工期が遅れたら違約金は請求できる?契約書の14番目を見る
リフォームの工期が遅れたときの違約金は、契約書に「1日あたりいくら」の定めがあればその金額を、定めがなければ実際に出た損害を請求する、という二段構えになります。どちらの場合も、遅れが業者側の責任によるものであることが前提です。

そして、その「1日あたりいくら」を書く欄は、業者が気を利かせて用意するものではありません。建設業法19条1項は、契約書に書かなければならない事項を16個並べており、その14番目が「遅延利息、違約金その他の損害金」です。つまり法律の側が、最初から欄を指定しています。
この記事では、①契約書のどこを開けばよいか ②その欄が空だったらどうなるか ③よく見かける「1日0.04%」という数字の正体 ④工事をやめられるのはどんなときか を、条文の実文にあたりながら順に整理します。あわせて、私たちが概算見積のエンジンを作ったときに工期の列を1つも作れなかったという開発の実測も載せます。
工期の遅れで請求できるのは「違約金」と「実際の損害」の2種類
まず言葉を分けます。よく混ざって使われますが、中身が違います。
違約金とは、「遅れたら1日あたり◯円」のように、契約の時点で金額の決め方を先に決めておいたものです。民法420条1項は「当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる」と定めており、同条3項は「違約金は、賠償額の予定と推定する」としています(民法・e-Gov法令検索(新しいタブで開く))。
実際の損害の賠償は、契約書に何も書いていなくても請求できる筋です。民法415条1項が「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき…債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる」と定めています。
| 違約金(賠償額の予定) | 実際の損害の賠償 | |
|---|---|---|
| 根拠 | 民法420条 | 民法415条 |
| 契約書の定め | 必要(金額か計算式) | 不要 |
| 金額の決まり方 | 書いてある式で自動的に出る | 出た損害を自分で示す |
| 立証の手間 | ほぼ不要 | 領収書・記録が必要 |
| 実損より多い/少ないとき | 原則、書いてある額で動く | 出た分だけ |
ここで多くの解説が止まってしまうのですが、大事なのはこの先です。違約金の条項は、施主にとって必ず有利とは限りません。予定した額が実際の損害より低ければ、その低い額が上限のように働く場面があるからです。
一方で、金額が決まっているぶん、争いは短く済みます。どちらが得かではなく、自分の契約がどちらの型で動くのかを先に確かめるのが順番です。
契約書のどこを見るか──建設業法19条1項が指定している4つの欄
工期に関係する記載事項は、建設業法19条1項の16項目のなかに4か所あります。実文は建設業法・e-Gov法令検索(新しいタブで開く)で確認できます。

| 号 | 見出しの中身(要約) | これで分かること |
|---|---|---|
| 3号 | 工事着手の時期及び工事完成の時期 | 「いつまで」の約束があったか |
| 6号 | 設計変更・着手延期・中止の申出があった場合の工期の変更等の定め | 打ち合わせで変えた分は差し引かれるか |
| 7号 | 天災その他不可抗力による工期の変更等の定め | 台風・大雪の分はどう扱うか |
| 14号 | 各当事者の履行の遅滞その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金 | 1日あたりいくら請求できるか |
読む順番は、3号 →(6号・7号)→ 14号です。まず約束の完成日を確かめ、次に「その遅れは誰の事情で生まれたか」を仕分けし、最後に金額の欄を見る。この順で読むと、業者と話すときの言葉が変わります。
契約書そのものが手元にない、そもそも書面を交わしていない、という場合は、先にリフォームで契約書がないときに今から何をするかを読んでください。19条の書面義務は業者だけでなく契約の当事者双方にかかっている、という話を条文で整理しています。
「1日0.04%」という数字はどこから来たのか
工期の遅れを調べていると、「請負金額の1万分の4(0.04%)×遅延日数が一般的」という数字に出会います。この数字を、そのまま自分の契約の相場だと思い込まないほうがよい理由が2つあります。
ひとつは単純な算数です。1日0.04%を1年分に伸ばすと、0.04% × 365日 = 年14.6%になります。この14.6%という率は、消費者契約法9条1項2号に出てくる数字と一致します。
もうひとつが本題です。その消費者契約法9条は、条の見出しが「消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項等の無効等」となっています(消費者契約法・e-Gov法令検索(新しいタブで開く))。9条1項2号も、「当該消費者契約に基づき支払うべき金銭を消費者が支払期日までに支払わない場合」を対象にしています。
つまり年14.6%という上限は、施主の支払いが遅れたときに業者が取れる額の天井として法律が置いた数字です。業者の工事が遅れたときに施主が取れる額の上限として定められたものではありません。
なお、消費者契約法9条2項は、事業者が違約金を請求する場面で消費者から説明を求められたとき、算定根拠の概要を説明するよう努めなければならないとしています。金額の根拠を聞くのは、法律が想定している行動です。
遅れの原因で結論が変わる──415条のただし書
違約金の欄が埋まっていても、それだけで自動的に請求が通るわけではありません。民法415条1項にはただし書があり、「その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない」と定めています。
現場で起きる遅れは、おおむね次のように仕分けられます。
- 約束の完成日を3号の欄で確認する(口頭で伸びた分がないかも含めて)
- 施主側の都合(仕様の変更・色決めの保留・立ち会いの日程)で動いた日数を6号の定めに照らして引く
- 台風・大雪・地震など不可抗力の分を7号の定めに照らして引く
- 残った日数が、業者側の事情による遅れの候補になる
- その日数に14号の式をあてる(式がなければ、残った日数で実際に出た費用を並べる)
3番目でよく問題になるのが、「工事を開けてみたら下地が傷んでいた」という遅れです。これは天災ではなく、施主の指示でもありません。追加工事の扱いと同じ構造の話になるので、リフォームの追加工事トラブルを見積と契約のプロセスで防ぐにまとめた6号の読み方が、そのまま工期にもあてはまります。
「実際に出た損害」として並べやすいのは、仮住まいを延長した費用、荷物を預けた費用、賃貸物件なら得られなかった賃料などです。領収書と、遅れを伝えられた日付の記録が、後から効きます。
工事をやめる(契約を解除する)ことはできるか
遅れが長引くと、契約そのものをやめたくなります。ここは条文がかなりはっきりしています。
民法541条は、相当の期間を定めて催告し、その期間内に履行がなければ解除できると定めていますが、ただし書で「その期間を経過した時における債務の不履行が…軽微であるときは、この限りでない」としています。数日の遅れで即解除、とは読みにくい条文です。
一方、民法542条1項は催告せずに解除できる場合を並べており、その4号が「契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき」です。
なお、民法420条2項は「賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない」としています。違約金を受け取ると工事の続行や解除を諦めたことになる、という関係にはありません。
概算見積の段階では、工期はまだ約束されていない
ここから先は、私たちが実際にリフォームの概算見積エンジン(メヤス)を作って分かったことです。
エンジンの計算のもとになる標準価格表は、50行×10列=500セルでできています。列は「カテゴリ/工事項目/グレード/商品例/型番例/商品説明/下限/上限/単位/画像URL」の10列です。この10列を見直して気づいたのは、日にちを入れる列が1つもないことでした。
500セルを全文検索すると、日程に触れているセルは2つだけです。
| 見つかったセル | 中身 | 日数として使えるか |
|---|---|---|
| 床(フローリング)標準の商品説明 | 「既存床の上に張る工法。工期短・ホコリ少」 | 使えない(比較の言葉で、日数ではない) |
| 諸経費・現場管理費の商品説明 | 「工事小計の10%(見積作成・発注段取り・工程管理)」 | 使えない(管理の費用で、期間ではない) |
つまり、工程を管理する費用は金額として計算に入っているのに、その工程が何日なのかは表のどこにも無いという状態でした。金額は50行から機械的に出せるのに、完成日は1日も出せません。
さらに、幅の大きい行を見ると理由がはっきりします。上限が下限の3.0倍になっている行は50行中4行で、そのうち3行が「浴室の土台・下地補修(5〜15万円)」「クロスの下地補修(1〜3万円)」「床の下地の補修・調整(2〜6万円)」——いずれも解体してからでないと状態が分からない行です。金額が3倍に開く工事は、日数も同じように開きます。
読者の側から見ると、実務上の意味はこうなります。打ち合わせで聞いた「だいたい2週間くらい」は、3号の欄に書かれるまでは約束になっていません。見積書の有効期限と同じで、日付は書面に載った瞬間に性質が変わります(見積書の有効期限に法的な意味はあるか)。
遅れている最中に、今日できること
最後に、順番だけ整理します。金額の交渉より前に、記録の整備が効きます。
- 契約書を開き、3号(完成時期)・6号(変更時の定め)・7号(不可抗力)・14号(違約金)の4か所を写しておく
- 遅れを知らされた日、伝えられた新しい完成予定日を、日付つきで記録する(メールやメッセージのまま残すのが確実)
- 遅れによって実際にかかった費用の領収書を、1か所にまとめる
- 業者に、新しい完成予定日と遅れた理由を書面で出してもらう(19条2項は、工期の変更も書面で相互に交付すると定めています)
- 金額の話は、4までそろってから行う
公的な相談先としては、国土交通大臣から指定を受けた住まいるダイヤル(住宅リフォーム・紛争処理支援センター)(新しいタブで開く)と、国民生活センター(新しいタブで開く)があります。消費者契約法そのものの考え方は消費者庁のページ(新しいタブで開く)が一次情報です。
自社サイトに概算見積を置きたい会社様へ。 金額の幅と「現地調査後に確定するもの」を先に見せておくと、工期の話も同じ順番で進めやすくなります。私たちが運営しているメヤス(新しいタブで開く)は、その考え方でつくった概算見積シミュレーターです。
リフォームの見積そのものの読み方は、リフォーム見積の考え方をまとめたページから順にたどれます。見積を取る前の準備はリフォーム見積もりの取り方にあります。
よくある質問
Q. 契約書に違約金の欄がありません。もう請求できないのでしょうか。
請求の道は残ります。民法420条は違約金を「予定することができる」という任意の規定なので、予定がなければ民法415条に戻り、実際に出た損害の賠償を求める形になります。ただし日額が決まっていないぶん、仮住まいの延長費用などを自分で示す必要があります。なお、建設業法19条1項14号は違約金等を契約書の記載事項として挙げているので、欄が空であること自体が書面の不備を示す材料にもなります。
Q. 遅れの原因が資材の納期でした。これは業者の責任になりますか。
一律には決まりません。民法415条1項ただし書は、債務者の責めに帰することができない事由による不履行を賠償の対象から外していますが、どこまでが「責めに帰することができない」かは、契約の内容と当時の状況で判断されます。発注の時期や代替品の検討がどうだったかが問題になりやすい部分です。契約書の7号(不可抗力)にどう書かれているかもあわせて確認してください。
Q. 「1日0.04%」で計算してよいのでしょうか。
自分の契約書にその式が書かれている場合だけです。この数字を年に伸ばすと年14.6%になり、消費者契約法9条1項2号の率と一致しますが、同条は見出しのとおり「消費者が支払う」側を対象にした規定で、業者が払う工期遅れの違約金に法律が置いた上限ではありません。一般に流通している数字を自分の契約の相場と考えないほうが安全です。
Q. 何日遅れたら契約を解除できますか。
日数で線が引かれているわけではありません。民法541条は催告してから解除する道を定めていますが、ただし書で不履行が「軽微であるとき」を除いています。一方、民法542条1項4号は、特定の日時までに終わらなければ契約の目的を達せられない場合に、催告なしの解除を認めています。入居日や退院日のように動かせない期限があるなら、その事情を契約の段階で書面に残しておくことが効いてきます。
Q. 違約金を受け取ったら、工事は続けてもらえなくなりますか。
そうはなりません。民法420条2項が「賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない」と定めています。違約金を受け取ることと、工事を完成させてもらうこと、契約をやめることは、それぞれ別の話として扱われます。
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#メヤス#リフォーム#AI法律