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判例読了 約7分

子どもが親のカードで勝手にゲーム課金した ― 未成年の契約は取り消せるのか

子どもが、親のスマホやタブレットを使ってゲームに課金していた――気づいたときには数万円の請求が来ていた、というトラブルは珍しくありません。結論から言うと、未成年の子どもが法定代理人(親など)の同意を得ずに結んだ契約は、原則として取り消すことができます。ただし、子ども側に「自分は成年だ」と信じさせるような積極的な行動があった場合は、話が変わります。

そのタップが取り消せるかどうか — 民法の条文と最高裁判例から取り消せる範囲を整理します。
タブレットに見入る子ども

結論 ― 原則は取り消せる。「詐術」があれば別

未成年者の課金を取り消せるかの判断の流れ
原則は取消し、詐術があれば例外

なぜそうなるのか ― 未成年者を守るための原則

民法は、年齢十八歳をもって成年とすると定めています。

年齢十八歳をもって、成年とする。

(e-Gov法令検索 民法(新しいタブで開く))

成年に達する前の子どもは「未成年者」として、契約などの法律行為をする際に、法定代理人の同意を必要とします。民法5条1項は次のように定めています。

未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。

(e-Gov法令検索 民法(新しいタブで開く))

そして、同意を得ずにされた契約については、同条2項が取消しを認めています。

前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。

(e-Gov法令検索 民法(新しいタブで開く))

ゲーム内のアイテム購入やガチャも、代金を支払う約束をする「契約」である以上、この条文の対象です。ゲーム会社側が、利用者が未成年者だと知らなかった、気づかなかったとしても、それだけで取消しができなくなるわけではありません。

「詐術」があれば取り消せなくなる ― 民法21条

ここで例外になるのが、未成年者の側が相手を信じさせるために嘘をついていた場合です。民法21条は次のように定めています。

制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。

(e-Gov法令検索 民法(新しいタブで開く))

ここでいう「詐術」が、具体的にどこまでの行為を指すのかを示したのが、次に見る最高裁判所の判決です。

実際にこう判断された裁判がある

詐術にあたる場合とあたらない場合の対比
黙秘のみでは詐術にあたらない

争われたのは、ゲームの課金ではなく、土地の売買契約でした。判決文によれば、ある人が未成年だった時期に土地を売る契約を結び、成年になった後に「法定代理人の同意を得ていなかった」としてその契約を取り消そうとしました。これに対して買主側は、「契約のときに年齢を黙っていたこと自体が、成年であると信じさせるための詐術にあたる」と主張しました。

最高裁判所第一小法廷は、昭和44年2月13日の判決で、次のように判断しました。

無能力者であることを黙秘することは、無能力者の他の言動などと相まつて、相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときには、民法二〇条にいう「詐術」にあたるが、黙秘することのみでは右詐術にあたらない。

(裁判所ウェブサイト 判例検索 昭和42年(オ)607号(新しいタブで開く))

つまり、年齢を聞かれても答えなかった、という「黙っていた」だけでは「詐術」にはなりません。詐術にあたるのは、他の言動と合わさって相手を誤信させた、または誤信を強めた場合に限られます。この条文はその後の改正で条番号が20条から21条に変わりましたが、内容は維持されています。

この基準をゲームの課金に当てはめると、子どもがアプリの年齢確認画面で生年月日を実際より上に偽って入力していた場合は、単なる黙秘以上の積極的な行動として「詐術」にあたる可能性が出てきます。一方、年齢確認の画面自体が無く、何も聞かれていなかった、あるいは聞かれたが答えなかっただけという場合は、詐術にはあたりにくいと考えられます。

自分の場合はどうなるのか(境界線)

以下は、条文から読み取れる範囲の整理です。個別の事案の結論を断定するものではありません。

場面取消しの可能性
年齢確認を求められず、何も答えていない詐術にあたりにくく、取消しの対象になりやすい
年齢確認画面で、生年月日を偽って成人のように入力した「詐術」にあたる可能性があり、取消しが難しくなる
保護者が日常的に許可していた、お小遣いの範囲内だった民法5条1項但書・3項の範囲なら、そもそも同意があったとされ取消しの対象にならない場合がある
課金で得たアイテムやポイントを使い切ってしまった取消し自体は可能だが、返還義務は現に残っている利益の範囲にとどまる

なお、取消しが認められても、未成年者側が払った代金をすべて無条件に返してもらえるとは限りません。民法121条の2第3項は、行為の時に制限行為能力者であった人の返還義務を、現に利益を受けている範囲に軽くする規定を置いています(e-Gov法令検索 民法(新しいタブで開く))。すでに消費してしまったゲーム内のアイテムが「現に残っている利益」にあたるかどうかは、個別の事情によって判断が分かれます。

同じように「契約をいつまで・どこまで取り消せるか」を条文から整理した記事に、「お試し」のつもりが定期購入だった記事があります。

心配な事情が実際にある場合は、一般論ではなく消費生活センターや弁護士等の専門家に相談してください。

受験生向けの一言

この論点を答案で書くときは、まず原則(民法5条2項の取消し)を示し、その上で例外である21条の「詐術」の要件を、「黙秘だけでは足りず、他の言動と相まって相手方を誤信させた、または誤信を強めたこと」まで分解して事実に当てはめるのが型です。「詐術があったから取り消せない」と結論だけ書くと、要件のどの部分が事実にあたるのかが採点者に伝わりません。

よくある質問

Q. 子どもが課金したことを後から知った場合、親が代わりに取消しを主張できますか?

できます。未成年者の法定代理人(通常は親)は、未成年者本人に代わって取消権を行使できます。

Q. 課金した分のアイテムをまだ使っていない場合はどうなりますか?

取消しが認められれば、支払った代金の返還を求めることができます。アイテムやゲーム内通貨が未使用であれば、原則としてその分の返還が問題になります。

Q. ゲーム会社が「利用規約に同意した時点で成人と確認済み」と主張してきたらどうなりますか?

利用規約への同意だけでは、相手を誤信させるための積極的な行動とは言えず、民法21条の「詐術」にはあたりにくいと考えられます。ただし、年齢確認画面で生年月日を偽って入力していたなど、他の事情が加わる場合は判断が変わることがあります。

Q. お小遣いの範囲内でのゲーム課金も取り消せますか?

民法5条3項は、法定代理人が目的を定めて、または目的を定めずに処分を許した財産の範囲内であれば、未成年者が自由に処分できると定めています。日常的なお小遣いの範囲内と評価される課金は、そもそも同意があったものとして取消しの対象にならない場合があります。

まとめ

  • 未成年の子どもが法定代理人の同意を得ずに結んだ契約は、原則として取り消せる(民法5条2項)。ゲーム内のアイテム購入やガチャも代金を支払う約束をする「契約」なので、この条文の対象になる
  • 例外は、行為能力者であることを信じさせるため「詐術」を用いた場合(民法21条)。最高裁判所第一小法廷昭和44年2月13日判決は、黙秘することのみでは詐術にあたらず、他の言動などと相まって相手方を誤信させた、または誤信を強めたと認められるときに限ると判断した
  • 取消しが認められても、払った代金が無条件に全額戻るとは限らない。民法121条の2第3項は、行為の時に制限行為能力者であった人の返還義務を、現に利益を受けている範囲に軽くしている

本記事は、e-Gov法令検索で確認した条文と、裁判所ウェブサイトの判例検索に収録された判決にもとづく一般的な情報であり、法的助言ではありません。個別の事案については消費生活センターや弁護士等の専門家にご相談ください。

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#レイの法廷#コラム#民法#未成年者取消権

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